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都市国家(としこっか、City-state)は、ひとつの都市とその周辺地域が、独立した政体としてひとつのまとまった形態をなす国家のことである。
歴史
古代における都市国家
古代において、都市国家は国家の、というより人間社会の最初の形態であった。まず外敵(人間だけでなく、オオカミやトラなどの肉食動物を含む)から安全を守るために、人間は集落を形成した。当初は食糧を求めて移動生活を送っていたため、集落の規模も最小限であったが、やがて農業や牧畜の発展により一ヶ所に定住するようになり、集落の規模も大きくなり、都市を形成した。人間が農業を行った最初は、古代オリエントのメソポタミア文明におけるシュメール人であり、彼らが最初の都市国家を築いた。都市の中心に神殿を持ち、集落の周りに城壁を築き、城壁外の農地や牧地とともに独立した国を形成していたシュメール文明の都市国家群がその原初的な形態である。
アテナイなどの古代ギリシアの小国家群や古代ローマ、古代インド(インダス文明)、古代中国(黄河文明。中国語では「或」や「邑」と呼ばれた)など古代には世界各地で見られる。
初期の都市国家は、都市周辺の農地・牧地において食をまかなう自給体制であったが、隣接する都市国家どうしでの交易がはじまると、交易に専従し、都市生活者の食をまかなうに十分な農地・牧地を持たない都市国家も成立した。
日本では弥生時代に加茂岩倉遺跡、吉野ヶ里遺跡の発見から都市国家群を形成していたと推定できる。近年は三内丸山遺跡の発見により、縄文時代にまで起源が遡る事となった。
人間が都市国家を形成する時代になっても、都市国家に参加しない人々もいた。古代中国においては、そういう人たちは野人と呼ばれた。
一般に都市国家群の国際関係においては強大な都市国家が弱小な都市国家を従属させたり、相互に同盟を結ぶことで密接な結合を持った同盟を結んでいく傾向がある。こうして形成された都市国家の連合は、古代ギリシアにおいてアテナイが盟主となって加盟する都市国家を従属させたデロス同盟がよく知られているし、殷・西周・春秋時代の王や覇者を中心とした秩序もこうしたものであった。アメリカ大陸のマヤ文明諸都市もアステカによって統合された。
都市国家の連合によるネットワーク型の国際秩序は、時として様々な内的、外的要因により領域国家に転換する。都市国家連合が完成すると、都市外部であっても連合の内部においてはある程度の秩序が生まれ、治安が保たれ、都市国家とは無縁に生活する人々も都市国家連合の中に組み込まれていく事となる。地中海世界におけるローマ帝国、イラン高原からメソポタミア、東地中海世界を統治したアケメネス朝、東アジアでは、戦国時代の諸王(戦国七雄)の統治下の諸国や、それらを統合した秦・漢帝国といったものがそれである。こうした転換の結果、都市国家は単なる地方単位(中国語では「県」という)になっていった。日本の大和朝廷の成立も、弥生時代の都市国家の連合が、領域国家へ転換したと見る事ができる。
中世における都市国家
古代における都市国家の多くが周辺の農地・牧地と一体のものであったのに対し、中世における都市国家の多くはそうした農地や牧地を持たずに、都市のみで国家を形成した。そうした都市国家は、周辺の領域国家との交易、交易の仲介、工業によって成立している。つまり、領域国家の成立後に、都市のみが独立を獲得したものが、中世の都市国家である。ヴェネツィアなどのイタリアの小国家群、神聖ローマ帝国の帝国都市などが、中世の都市国家の例として挙げられる。
日本における堺や博多なども国家とは言えないがほぼ完全な自治を行っていた点に鑑みると都市国家に近い形態を持った地域と言えるだろう。
近代・現代における都市国家
第一次世界大戦後にはダンツィヒが国際連盟保護下の都市国家である自由市(自由都市ダンツィヒ)となり、フィウメやバトゥミも短期間だが自由市とされた。第二次世界大戦後にはトリエステが国際連合の管理下で都市国家(トリエステ自由地域)となることが決まったが実現しなかった。現代ではシンガポール、モナコ、バチカン等が挙げられる。
主権国家ではないが、ドイツ連邦共和国を構成する州であるハンブルクやブレーメン、中華人民共和国の特別行政区である香港やマカオ、ギリシャのアトス山において大幅な自治が認められているアトス自治修道士共和国等も、都市国家に近い存在である。ハンブルク、ブレーメンの場合は「自由ハンザ都市」という呼称もあり、正式名称も「自由ハンザ都市ハンブルク」となっている。
また、厳密には都市国家とは言い難いが、面積が狭小なジブチ、ナウル、サンマリノも都市国家に準ずる国家であると見なされる場合もある。ジブチやサンマリノでは一国がほぼ首都の経済圏となっているし、ナウルは小さなひとつの島で構成されているだけであるからである。ただし、ジブチやサンマリノでは小さいながらも首都以外の行政地区も存在する。逆にナウルでは、そもそも「都市」と呼べるほどの集落が存在しない。
関連項目
外部リンク
- 世界飛び地領土研究会 - 独立自由市、国連管理地帯、国際管理地帯の項目で近代の各都市国家の概説あり。