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罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ)は、ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令(議会制定法を中心とする法体系)において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰予め明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。

根拠


罪刑法定主義の根拠は、以下のように自由主義民主主義の原理にこれを求めることができる。

  • どのような行為が犯罪に当たるかを国民にあらかじめ知らせることによって、それ以外の活動が自由であることを保障することが、自由主義の原理から要請される。
  • 何を罪とし、その罪に対しどのような刑を科すかについては、国民の代表者で組織される国会によって定め、国民の意思を反映させることが、民主主義の原理から要請される。

派生原理 


罪刑法定主義の派生原理として以下のような事項が要求される。

批判


従来の法律が想定していた可能性を超えた態様の悪意のある事件が発生した場合に、法律規定から処罰が難しかったり刑罰に上限が出来てしまい、悪質だが処罰が難しかったり厳罰にすることができない、という点についてこれを柔軟に処罰することができない罪刑法定主義は批判的に捉えられることもある。これに対し、罪刑法定主義という観念を有しない伝統的な英米法の法域では、後述のとおり行為時に成文法で禁止されておらず、判例上も犯罪として認知されていなかった行為が、裁判の結果としてコモン・ロー上の犯罪として処罰されることがあり得る。その意味で、コモン・ロー上の犯罪には、「弾力性」がある田中英夫『英米法総論』(下),東京大学出版会,1980,580頁。

犯行発生当時に従来の法律が想定していなかったような態様の事件としては以下のものがある。

日本における沿革


日本も含めて近代以前のアジア諸国の律令制度においては、社会秩序の維持を名目として、法令に該当しない犯罪を裁く規定である「断罪無正条」や、法令に該当しない軽犯罪の裁判を行政官の情理による裁量に委ねる「不応為条」が必ず設けられており、類似の犯罪行為の規定からの類推適用が許されてきた。罪刑法定主義が日本で採用されるのは明治時代の旧刑法施行以後のことであり、大陸法の影響を受けた明治憲法(第23条)や、現行の日本国憲法第31条第39条)には罪刑法定主義に該当する条文が存在する。ただし、現行刑法には罪刑法定主義について直接触れた条項は存在しない。

英米法


英米法は、伝統的に罪刑法定主義の観念を有さず、裁判所は、成文法で禁止されていない行為であっても、コモン・ロー上の犯罪として、適当な刑罰を科すことができる。この法理は、現在でも、イギリスやアメリカの多くの法域において維持されている(他方で、現在では、法域によって、議会制定法が罪刑法定主義に相当する規定を定め、この法理を制限している場合もある。)田中英夫『英米法総論』(下),東京大学出版会,1980,580頁。コモン・ロー上で「犯罪」とされる行為の多くは、「先例」によって古くから「犯罪」とされてきた行為であるが、「先例のない行為」であっても、新たに「コモン・ロー上の犯罪行為」として認知され、刑罰を科されることがある。例として、イギリスのShaw事件(1961年)Shaw v. Director of Public Prosecutions [1962] A.C. 220.やアメリカのMochan事件(1955年)C. v. Mochan, 110 A.2d. 788 (Pa.Super.Ct.1955).などがある田中英夫『英米法総論』(下),東京大学出版会,1980,580頁,Loewy, Arnold H. "Criminal Law". 4th Ed., West Groop, 2003, 300.

英米法においても、「事後法の禁止」という考え方は一応存在する(アメリカ合衆国憲法第1編9節3項、10編1節など)。しかし、新たに「コモン・ロー上の犯罪」を認めたとしても、「事後法の禁止」に抵触しないとされる。コモン・ローは、「十全な体系として昔から存在するものであり、判例は、それを宣明するものにすぎない」という立場に基づいて正当化されている田中英夫『英米法総論』(下),東京大学出版会,1980,580頁。

その他


また、判決に際して裁判官が処遇についての意見を述べることはよくあることであるが、無期懲役の判決にあたって「仮釈放は慎重に」との意見を付して「事実上終身刑に等しくなる、罪刑法定主義に反する」と一部から批判が出たことがある(大阪市イタリア語講師殺害事件)。

参考


マグナ・カルタ第39条
Nullus liber homo capiatur, vel imprisonetur, aut disseisiatur, aut utlagetur, aut exuletur, aut aliquo modo destruatur, nec super eum ibimus, nec super eum mittemus, nisi per legale judicium parium suorum vel per legem terre.
いずれの自由人も、同輩による適法の審判又は国法によるのでなければ、逮捕、収監、押収、追放他一切の侵害を受けることはなく、我々は、それを及ぼすこともない。
大日本帝国憲法第23条
日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ
日本国憲法第31条
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

脚注

関連項目




憲法
刑法
法理



出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


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