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物権的請求権(ぶっけんてきせいきゅうけん、ドイツ語:dinglicher Anspruch )とは、物権の内容を実現するために認められる請求権をいう。物上請求権とも。
- 日本の民法について以下では、条数のみ記載する。
概説
物権とは、直接的に物を支配する権利である。しかしながら、他人により物権が侵害されることも起こりうるため、物権に基づいてその侵害を排他する権利が物権的請求である。物権はその排他性ゆえに当然に物権的請求権を有していると解される。実定法上の根拠としては、ドイツ民法では所有権や地上権などについて明文の規定がある。日本の民法では所有権などに基づく物権的請求権については第202条に「本権の訴え」として定められている。なお、物権的請求権と占有の訴え(占有訴権)との関係が問題となり、占有の訴えは事実状態たる占有の保護を目的とするもので本権に基づく物権的請求権とは性質を異にするものであるとする説もあるが、いずれも物権の直接的支配を保護する権利であることなどから占有の訴えも広い意味において物権的請求権の一種であるとみる説が多数説とされる遠藤浩・川井健・原島重義・広中俊雄・水本浩・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、149頁我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法1 総則・物権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、335頁(後者の見解に立てば日本の民法は占有権についてのみ物権的請求権を規定しているという説明になる我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法1 総則・物権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、273頁)。
講学上は物権的請求権については物権の一般的な効力として、占有の訴えについては占有権の効力として論じられることが多いため物権的請求権につき我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法1 総則・物権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、273頁以下。占有訴権につき我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法1 総則・物権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、335頁以下、占有の訴えについては占有権#占有訴権に譲り、本項では特に所有権など本権の効力として認められている民法上の「本権の訴え」を軸に説明する。
内容
物権的請求権には、物権的返還請求権(Herausgabeanspruch) 、物権的妨害排除請求権(negatorischer Anspruch)、物権的妨害予防請求権、引取請求権の4つがある。このうち日本で認められるのは前三者のみである。これらは所有権に基づく場合には、それぞれ所有物返還請求権、所有物妨害排除請求権、所有物妨害予防請求権と概念づけられることになる我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法1 総則・物権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、274頁。なお、物権的妨害排除請求権、物権的妨害予防請求権につき現実の妨害と危殆化した妨害以上の差はなく区別する意義に乏しいとの見解があるが、さしあたりここでは従来の通説に従って解説する。
- 返還請求権
- 自己の所有する土地を他人が権原なく占拠する場合に、所有物返還請求権により、土地を取りもどすことができる。典型的な物権的返還請求権の一例である。なお、所有物返還請求権と同時に占有回収の訴え(200条)によっても土地を取り戻すことはできる場合があり、このような場合にいずれの方法によるかは当事者の意思に委ねられる。
- 但し、不法占拠者も占有回収の訴えにより土地を取り戻そうとする場合がある。この場合は、所有権に基づく返還請求権は抗弁として認められない(202条)。ただし、所有権に基づく反訴は認められる(最判昭40・3・4民集19巻2号197頁)。
- 妨害排除請求権
- 物権者は自己の物権の実現が妨げられている場合に、その妨害を取り除くよう請求することができる。
- 抵当権者から抵当の目的である土地上の樹木の伐採の禁止を請求する場合や、廃棄物を不法投棄された土地の所有者が原状回復を請求する場合等がある。
- 妨害予防請求権
- 物権者は自己の物権の実現を妨害されるおそれがある場合に、そのおそれを取り除くよう請求することができ、この請求権を物権的妨害予防請求権という。妨害が現実化しているか否かによって妨害排除請求権と区別される。
費用負担
物権的請求権の行使により、誰が費用を負担をするかについては議論がある。例えば、Xの家の木が地震で倒れ、隣人Yの土地に横たわってしまった場合などがよく事例として取り上げられる。
この場合、Xは木の所有権に基づく返還請求権を行使できるのに対し、土地の所有者は土地の所有権に基づく妨害排除請求権を行使することが考えられる。
- 行為請求権説
- 物権的請求権の相手方が費用を負担する考え方で判例の立場。
- しかし、早いもの勝ちで、請求された側が費用を負担しなければならなくなる点がこの学説の問題点となる。
- 補正行為請求説
- 通説の立場である。
- 原則として相手方が費用を負担するが、相手方の行為によらないで目的物が相手方の支配下に入った場合には例外として、自らがする回復行為の認容を請求するにとどまる。
- 忍容請求権説
- 物権的請求権を提起した方が費用を負担する考え方。物権的請求権は、物に対する追求権であり人に対する権利ではないとする。
- しかし、当事者が互いに費用を負担することを拒んで提起しないと、物権の効果を回復することができない点がこの学説の問題点となる。
脚注
関連項目