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西洋料理発祥の碑(長崎県[[長崎市)洋食(ようしょく)とは、日本の料理の一カテゴリーである。広義では本格的な西洋料理から西洋風の料理全般を指し、狭義では日本で独自に発展した西洋風の料理を指す。
概要
洋食は、幕末から明治期にかけて、西洋人のために開店した西洋料理店の料理がルーツである。それらの店で下働きしていた日本人コックたちは、のちに独立開業し、日本全土にその料理を広めた。また、これとは別に、陸海軍はフランス陸軍とイギリス海軍を手本にして早くから西洋式の食事を給食に取り入れていた。こうして徐々に日本人に知られるようになった西洋料理は、日本の伝統的な「和食」に対して、次第に「洋食」と呼ばれるようになった。それまで日本人は肉食を忌避する習慣があったため、肉料理を主体とする西洋料理は日本人には馴染みにくかった。しかし、1872年3月3日(旧暦明治5年1月24日)、明治天皇が「これまで肉食を忌避してきたのは謂われのないことである」として牛肉を口にされたという報道などもあり浅羽昌次「明治時代における食肉事情」中の引用、庶民のあいだでも徐々に牛鍋などの形で肉食が広まった。
明治時代の日本において、西洋料理の食材を完全に揃えることは困難で、しばしば代用品が使われた。また日本人の味覚に合わせようとしてアレンジも加えられた。そうして生まれた洋食として、カレーライス、カキフライ、エビフライ、コロッケ、ステーキ、オムライスなどが挙げられる。「豚カツ」のように、ほとんど和食と化した料理もある。また北海道のエスカロップのように、ご当地料理として町おこしに使用される料理もある。
マカロニグラタン『エスコフィエフランス料理』Georges Auguste Escoffier著/角田明訳、柴田書店、p1119、クリームコロッケ、コンソメスープ、ポタージュ(フランス料理)、ビーフシチュー(イギリス料理)、ピカタ(イタリア料理)などは、西洋の調理法をほぼそのまま踏襲している洋食である。これらは第二次世界大戦後、アメリカの小麦戦略により、急速に日本人の食生活に広まり、ポピュラーな洋食となったものである。
歴史
- 1863年(文久3年)、日本初の西洋料理店「良林亭」が長崎で開業。店主兼料理長は草野丈吉、パトロンは明治を代表する実業家の渋沢栄一と五代才助。外国人や薩摩藩士に重用された。
- 1868年(慶応4年)、「築地ホテル館」開業。レストラン初代料理長はフランス人コックのルイ・ベギュー。このレストランが日本で最初のフランス料理店とされる。
- 1872年(明治5年)、現在も営業する日本最古の西洋料理店とされる築地精養軒(支店の上野精養軒が存続)が本開業日本西洋料理史上の名店紹介 ~その1~。
- 1872年(明治5年)、西洋料理のレシピ集「西洋料理指南」(敬学堂主人)、「西洋料理通」(仮名垣魯文)が出版される。
- 1897年(明治30年)、和洋折衷料理という言葉が流行。東京の洋食店が1500店を数えた。このうち、銀座の「煉瓦亭」は、ソテー料理であったカツレツを大量の油で揚げる調理法によって改良を行い、その後に大流行する豚カツなど日本の洋食に大きな影響を与えた。
- 1917年(大正6年)、『コロッケー(コロッケの唄)』が流行。歌詞は「ワイフを貰ってうれしかったが、いつも出てくるおかずはコロッケー、年がら年中コロッケー、アハハッハ、是りゃ可笑しい」というもの。新妻は、女学校で学んだ当時のハイカラな洋食であるコロッケを毎日張り切って作っていたのだが、亭主はうんざりしてしまったという内容である『にっぽん洋食物語大全』、小菅桂子著、p175。
- 1924年(大正13年)、東京神田に和・洋・中華のすべてを扱う大衆食堂「須田町食堂」が開店し、廉価(8銭)でカレーライスをメニューに載せるなどして人気となった当時の大卒初任給70円、日雇労働者日当1円63銭。。このころ、お好み焼きのルーツのひとつである「一銭洋食」が駄菓子屋で人気となる。小麦粉を水で溶いたものを鉄板に広げ、刻みネギなどを乗せて焼き、ウスターソースをかけて食べた。
- 1956年(昭和31年)、栄養改善指導のため、数台のキッチンカーが日本中を走り、洋食(および中華料理)の調理法を教えて回った。スケジュールは新聞で告知され、主婦たちのあいだで大人気となった。献立の食材は各地域ですぐに売り切れるほどだった(めざとい商店はあらかじめ食材をたくさん仕入れたという)。これはアメリカ農務省が資金援助を行ったもので、その条件は「献立にかならず小麦粉を使った料理を入れること」だった。「フライパン運動」とも呼ばれ4年余り続き、その後も各自治体が数年にわたって引き継いだ。日本食生活協会が設立されたのもこの頃である。洋食は「近代的で望ましい食」とされ、このころ日本人の食生活が大きく転回した。
調味料・ソース
昔なつかしい洋食というとウスターソースの存在を欠かすことはできない。イギリスで生まれた調味料で、明治20年前後から輸入されていたがはじめは評判が悪く、明治27年から33年頃に日本のソースメーカーが、魚醤に近い元のウスターシャソースに果物や野菜のピューレを加えるなどして日本人の舌にあう製品を開発し、徐々に広まった。「新味醤油」「洋式醤油」などと呼ばれ様々な料理に用いられた。記録によると昭和11年の阪神百貨店の大食堂では一人当たり160ccも使用したという記録が一桁間違っている可能性もある。『天ぷらにソースをかけますか?』野瀬泰申、新潮文庫、p303。ドミグラスソースやホワイトソース(ベシャメルソース)は、19世紀頃のフランス料理では主流のソースであった。トマトケチャップが大衆化したのは第二次世界大戦後にアメリカ進駐軍が日本に持ち込んで以降である。
日本固有の洋食
近年においては、従来のように西洋料理全般を大雑把に洋食と呼ぶことは減り、フランス料理・イタリア料理・スペイン料理・ロシア料理・ドイツ料理などと国別に呼びわけるのがふつうになっている。そのため、いまは日本で独自に進化した西洋風の料理のことを「洋食」とすることが多い。岡田哲は『とんかつの誕生』(p72)で、「パンと合うのが西洋料理であり、米飯と合うのが洋食」という説を唱えた。また石毛直道は『講座 食の文化 第二巻 日本の食事文化』で、「「洋食」は特定の欧米に限定されたモデルをもたない。それは、日本人がばくぜんとイメージした欧米一般のことであり、いわば日本で再構成された外来風の食事システムである」(同書p381)と述べている。また村岡實は、平凡社の『世界大百科事典』の「洋食」の項のなかで、「洋食には多分に日本的な要素がふくまれている」と指摘している。
代表的なメニュー
- オムレツ 溶き玉子に塩・胡椒などで味付けをしてフライパンで焼く代表的玉子料理。食材も作り方も単純だが、焦がさずふんわり仕上げるにはフライパンの使い方や火加減など基本技術に習熟する必要があり、すべての料理の基本ともいわれる。
- オムライス ケチャップで味をつけた米飯(チキンライス)を玉子の薄焼きでくるんだ日本独自の洋食。元祖については諸説ある。
- カレーライス - インド料理のカレーがイギリス経由で来日。軍の糧食として採用され、米飯を主食とする日本の食文化とマッチして定着。「ライスカレー」とも呼ばれた。
- ハンバーグ - 原形はドイツのタルタルステーキで、アメリカ経由で日本に伝わったという説があるが定かではない。挽肉にパン粉や卵などのつなぎを合わせて比較的安価に作れるため、レストランでもお手頃な料理として人気となり、家庭料理としても早くから普及した。
- ムニエル - 魚を小麦粉でファリネしてバターでソテーする、フランスでは一般的な魚介料理。
- フライ - 代表的なエビフライやカキフライの他、材料は鯵・イカ・鮭や白身魚など。味噌汁に御新香、箸を添えた膳立てで出されるなど、和食のような扱いを受けることがある。
- カツ - ソテー料理のカツレツを改良したもの。肉などにパン粉の衣をつけ多量の油で揚げて調理する。素材を魚や野菜とした同様の料理は「フライ」である。代表的なものに豚カツ・チキンカツ・メンチカツ等。
- コロッケ ベシャメルソースに獣肉や魚介などを合わせて揚げたクリームコロッケはエスコフィエの料理書「Le Guide Culinaire」にも掲載されているフランス料理だが『エスコフィエフランス料理』Georges Auguste Escoffier著/角田明訳、柴田書店、p305、ポテトコロッケの起源は諸説あって定かではない。
- スパゲッティ - もともとはイタリア料理だが、スパゲッティナポリタンや、たらこスパゲッティ、納豆スパゲッティのように、日本で生まれた和風スパゲッティは洋食に分類されることがある。
- ステーキ 肉類を大判の厚切りにカットして焼いた料理。通常は牛肉料理を指し、厚切りで美味しく食べられる部位はランプ、サーロイン、リブロース、フィレなど限られているため高価であることが多い。明治期以前の日本には存在しなかった食習慣であるが、醤油で味付けするなど、和風に調理される場合もある。ファミリーレストランや居酒屋のメニューで見られるサイコロステーキは日本で生まれた。
- ハヤシライス - ハッシュドビーフまたはビーフストロガノフとご飯との組合せが更に変化したもの。
- シチュー - 肉や野菜を煮込んだイギリス料理で、フランス料理ではラグーやポトフの応用にあたる。日本では簡便な固形ルーを用いる調理方法が普及している。日本の洋食店では、ビーフシチューやクリームシチューが秋から冬にかけての定番メニューとなる。
- ロールキャベツ - 日本独自の食べ方として、おでんの具になることがある。
- グラタン - フランスではグラティネと発音し、オーブンやバーナーなどで表面に焼き色をつけることを指す。ポテトやシーフードなどの具材にホワイトソースとチーズをかけて焼いたグラタンはフランスでは古典的な料理。
- ドリア - 昭和初期に、横浜ホテルニューグランドの初代総料理長・サリー・ワイルが考案した料理。米飯に獣肉や魚介のクリーム煮とチーズをのせてオーブンで焼いたグラタン。
- ピラフ - 元々はトルコ料理で、生米に具を加え出汁で炊いた料理。ただ、日本の洋食店でピラフとして出されている料理は必ずしも本来の作り方をしているとは限らず、すでに炊きあがった白米を洋風に味付けして炒めている場合もある。
注釈
参考文献
- 『にっぽん洋食物語大全』 小菅桂子著、講談社+α文庫、1994年(平成6年) ISBN 978-4062560658
- 『とんかつの誕生――明治洋食事始め』 岡田哲著 、講談社[講談社選書メチエ]、2000年(平成12年) ISBN 4062581795
- 『とんかつ フライ料理 人気店のメニューと調理技術』 旭屋出版ムック 2009年(平成21年) ISBN 4751108182
- 『エスコフィエフランス料理』 Georges Auguste Escoffier著/角田明訳、柴田書店 1969年(昭和44年)
- 『佛蘭西料理献立書及調理法解説』 鈴本敏雄著、奎文社出版部 1920年(大正9年)
- 『明治・大正・昭和 食生活世相史』 加藤秀俊著、柴田書店 1977年(昭和52年)
- 『日本のホテル小史』 村岡實、中央公論新社 1981年(昭和56年) ISBN 978-4121006165
- 『横浜流―すべてはここから始まった』高橋清一著 東京新聞出版局 2005年(平成17年) ISBN 4808308347