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母体保護法(ぼたいほごほう、昭和23年7月13日法律第156号)は、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする法律である(同法1条)。
本法によって母体保護法指定医師が指定される。また、本法では薬事法の規定に関わらずペッサリー等避妊具を販売できるという特権を有する受胎調節実地指導員についても規定が置かれている。
経緯
当初は1948年に、優生保護法という名称で施行された。この法律は、戦前の1940年、国民優生法(断種法)に沿革を有するもので、国民優生法と同様優生学的な色彩が強い法律であり、不良な子孫の出生の抑制を目的とし、母体の保護はそのための手段という位置づけがなされていた。もっとも、戦前の国民優生法においては、強制断種の条項に象徴されるように優生手術(不妊手術)に重点を置いており、中絶一般については否定的な立場をとっていたが、戦後の優生保護法においては、戦後の混乱(復員による過剰人口問題、強姦による妊娠の問題)を背景にし、妊娠中絶の合法化の手段のため優生思想を利用したという側面があった。第1回国会において国民優生法案を提出したのは日本社会党(当時)の福田昌子、加藤シヅエ、太田典礼といった革新系の政治家である。一方で、優生思想に基づく条項の多くは残存したままとなった。そのため「木に竹を接いだ法律」と称された。
1949年の法改正により、経済的な理由による中絶の道が開かれ、1952年には中絶について地区優生保護審査会の認定を不要とした。刑法上の堕胎罪の規定は存置されたが、空文化が指摘されるようになった。
その後、高度成長により、保守系の団体からは将来の優れた労働力の確保という観点から中絶の抑制が主張されるようになる一方、羊水診断の発展により、障害を持つ胎児が早期に発見されるようになり、障害者団体や女性団体から優生学的理由を前面に出した中絶の正当化に対する反発が広がるようになった。1970年代から80年代にかけて、経済的な理由に基づく中絶の禁止や胎児条項をめぐって、保守系団体と女性団体、障害者団体との間で激しい議論がなされた。
1996年の法改正により、法律名が現在のものに変更されるとともに、優生学的思想に基づいて規定されていた強制断種等に係る条文が削除され、「優生手術」の文言も「不妊手術」に改められた。
なお、優生保護法、母体保護法ともに、議員立法によって制定・改正が行われてきている。ただし、行政実務上の主務官庁は厚生労働省(雇用均等・児童家庭局母子保健課)となっている。
構成
- 第1章 - 総則(第1条~第2条)
- 不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的としていると記述されている。
- 旧優生保護法では、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とすると記述されていた。
- 第2章 - 不妊手術(旧法では、優生手術)(第3条~第13条)
- 旧法では、本人又は配偶者の遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患もしくはは癩(らい)疾患、血族の遺伝性精神病などを理由により優生手術(断種)を行うことができた。また、特定の遺伝性精神・身体疾患に対し、医師がその疾患の遺伝を防止するため公益上必要であると判断した場合、都道府県優生保護審査会の審査を経て、(本人又は配偶者の意向に関係なく)優生手術を行うものとされた。
- 現法では、不妊手術は審査を受けず、本人と配偶者の同意で行えると明記され、4~13条は削除とされている。
- 第3章 - 母性保護(第14条~第15条)
- 第14条では、指定医師は次のいずれかに該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができるとされている。
- 1) 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
- 2) 暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
- 第4章 - 削除(旧法では、都道府県優生保護審査会)
- 第5章 - 削除(旧法では、優生保護相談所)
- 第6章 - 届出、禁止その他(第25条~第28条)
- 第7章 - 罰則(第29条~第34条)
- 附則
免許・資格
補足
旧法(優生保護法)時代には表記の不一致があった。
- 遺伝性奇型(第3条第1項第1号、第14条第1項第1号及び同第2号)⇔遺伝性畸形(第3条第1項第2号)
- 癩疾患(第3条第1項第3号)⇔らい疾患(第14条第1項第3号)
関連
外部リンク