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性別役割分業(せいべつやくわりぶんぎょう)とは、家庭における夫婦それぞれの責務や役割について明確に区分することである。性別役割分担、性別役割配分ともいう。
世界
生物学的な差異から女性は生命を生むという特質を有し、授乳など子供の育成も重要で結果的に家庭内行動に恵まれることが多い。身体的特徴から役割の固定観念が定着していたと言える。古代以来、農業では男性も女性もともに仕事を担ってきた。何らかの形で男女分業がなされていたケースが多いが、地域や家庭により多様な分担の形態があり、一概には言いがたい。戦争では戦闘員として男性が活躍し、女性は看護など限定的な役割を担ったのは、世界共通である。近代の産業革命・工業化の時期は女性も賃金の安さから過酷な労働を強いられ、母性保護の観点から女性労働は規制された。現代になると、産業構造の変化が常態化し、さまざまな種類の産業が比較的短い周期で興隆と衰退を繰り返すようになり、こうした状況に対応できる体制造りが必要になった。教育面では技術教育及び職業教育に関する条約にみられるように、男女の区別のない、生涯を通じた技術・職業教育の拡充により、女性も幅広い業種でフルタイムの賃金労働を行うようになる。また重労働からも解放された一部の男性が家庭に携わる余裕もでき、従来の性別役割分業という概念が検討されるようになった。
特に役割分担の概念が薄くなっているのは北欧諸国である(北欧諸国の産業構造は日本と同様に非サービス業が中心である)。北欧諸国は1980年代後半から90年代前半にかけて国境を越えた産業構造の変化による経済不振に直面していたが、技術イノベーション促進政策と福祉政策の拡充によって経済不振を乗り越えたと言われている。しかし、その北欧諸国においても、徴兵制に関しては男性だけに負担を強いているとして、マスキュリズムの論者などから男性差別として厳しい批判を浴びている。
日本
現代の日本では「男は仕事、女は家事・育児・買物」という分業を主とする。また、その逆も存在するたとえば風俗産業などで働く女性と、家事を行ってそれを支える男性、というスタイル(俗に「ヒモ」と言われることもある)も少数派ではあるが存在する。。自営業や農業などは家内労働であるため、こうした役割分担の概念は必ずしも当てはまらない。また、これらとはまったく異なる分業も含む概念である。近年ではここから敷衍して、社会全体としての男性、女性の生き方(生計の立て方)に関する文脈でも用いられるようになっており、やや混同も見られる。戦後、明治民法において制定された家制度が廃止され、高度経済成長期に、夫は仕事に出かけ妻は育児・家事・買物に専念して家庭づくりに励む、といった核家族のイメージが広く一般化した。
1950年代から1970年代にかけての高度成長期に、既婚女性は労働から解放された。家庭の収入増と安定化により、既婚女性が専業主婦の立場である状態が大勢を占め、性別役割分業が広まった。日本の工業化がその原因のひとつであった。基本的に第二次産業ではブルーカラーが主な働き手であり、女性がそれに参加することは、事実上困難を伴っていた事情もある。一方、特に都市部では、女性の高学歴化と職場進出が進み、当時選択科目であった高校家庭科を履修しない生徒が増加した。この状況に危機感を覚えた家庭科教師団体などが中心となり、1973年から高校家庭科は女子のみ必修(男子は選択科目)となった。
1970年代後半以降には、産業の焦点が規格大量生産から多様化、情報化、省資源化に変化すると共に生産技術が飛躍的に進歩し、ブルーカラーの軽作業化、経済のソフト化、頭脳労働化、家事の機械化などが進み、女性の社会進出(賃金労働者化)が可能な条件が整い、勤労女性が増加してきた。そのため核家族の性別役割分業システムが問いなおされる契機のひとつとなった。
1990年代から2000年代の経済の停滞・賃金の下落傾向により、共働きが増加し、夫婦間での役割(日本語の「ジェンダー・ロール」)が見直されつつある。少子化から労働力不足が懸念され、労働力の増加を期待した男女共同参画の政策を政府が進めている。
近年では女性の労働力化が進んでいるが、男性の家事の分担はそれに対応するほどには進んでおらず、「男は仕事、女は仕事と家事・育児」という分担が「新・性別役割分業」と呼ばれることもある。
"男の仕事"や"女の仕事"という意識は現在でも強く残っている。文部科学省の近年の学校基本調査によると、生徒の進路選択において、高校または大学の理工系学科への進学者のおよそ7~9割が男性で占められ、家政系学科への進学者のおよそ8割~9割が女性で占められている。OECD生徒の学習到達度調査の科学的リテラシーに関する調査では、日本の男女間に有意な能力差は認められておらず、ステレオタイプな性別役割分業意識が進路選択に影響している可能性が指摘されている。こうしたステレオタイプは日本に限らず世界で幅広く見られた(あるいは現在でも見られる)ものであるが、技術教育及び職業教育に関する条約や女性差別撤廃条約では、こうしたステレオタイプを慣行上の差別とみなし、積極的に是正することを求めている。
女性の社会進出と性別役割分業
女性の社会進出(賃金労働者化)が進み、共働き家庭が増えた一方で、女性と男性の家事・育児時間は共働き家庭で妻は4時間23分、夫は11分と大きな差がある『論争・少子化日本』(中公新書)p198。
この主な原因は、通勤時間を含めた日本人男性の長い労働時間にある。スウェーデンでは午後6時には男性の70%以上が帰宅しているのに対して、日本では同時刻の男性の帰宅率は6%台に過ぎない。午後8時以降になってようやく日本人男性の帰宅率が60%を越えるのである池上彰著『ニッポン ほんとに格差社会?』(小学館)p153。これは、労働人口や企業が集積する東京圏など、職住近接が難しい都市部において特に顕著である。
脚注
関連項目
外部リンク