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居住移転の自由(きょじゅういてんのじゆう)とは、基本的人権の一種であり、日本国憲法第22条第1項で定められている自由権の一つ。
歴史
封建体制下では、多くの人々が居住地を選ぶ自由や自国内を移動する自由を許されていなかった。そして近代社会の形成と発展は、人々がこれらの自由を得ることによって成されたのである。資本主義経済の発展のためには、人的資源が自由に市場を流通し、それを必要とする企業に集まることが出来なければならない。したがって、居住移転の自由は、資本主義を成り立たせる不可欠の要素といえる。事実、資本主義は、人々の自由な移動が保障され、労働力の均衡・調節可能な営業活動が為されることにより、急速な発展を遂げてきた。
そして現在においても、居住移転の自由は職業選択の自由と結びつく経済活動の自由の性格を持っている。
内容
居住移転の自由は、自己の住所または居所を自由に決定し、また自由に移動することを内容とする。単に経済的自由権としての性格のみに留まらない、多面的・複合的な性格を持つ権利であるとされている。
- 経済的自由権としての性格
- :人は自由な居住・移転を通じ、自己の経済生活を維持・発展させる。例えば、人が就労場所を自由に選ぶためには、居住移転の自由が確保されている必要がある。
- 身体的自由権としての性格
- :自己の移動したい所に移動できるという点で身体の自由としての側面も有する。身体の自由は、単に拘束されないという消極的な自由に止まらず、自分の好きな所に居住・移転する積極的な自由をも含む。
- 精神的自由権としての性格
- :人が自分の好むところに移動することは、表現の自由・集会の自由と密接な関係にある。また移動の自由は、人間の活動範囲を広げ、新しい人的接触の場を得る機会を与えることにより、人格の形成と成長に不可欠の条件となる。
居住移転の自由の限界
居住移転の自由が多面的・複合的な権利であることから、その限界も、それぞれの場合に応じて具体的に検討する必要がある。精神的自由の側面が強調される場合には、経済的自由の側面が強調される場合に比べ、より厳格な審査基準を採用するべきである。
海外渡航の自由
一時的な海外渡航の自由については、日本国憲法第22条の第1項と第2項のどちらで保障されているかで見解が対立している。
参考文献
- 伊藤正己 『憲法[第三版]』 弘文堂、1995年
- 佐藤幸治 『憲法[第三版]』 青林書院、1995年