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型)。いわゆる保険証。
当時の政府管掌健康保険のもの。現在は水色のカードとなっている。
(上:表、下:裏)健康保険(けんこうほけん)とは、日本公的医療保険制度、すなわち社会保障のうち社会保険医療保険)に分類され、健康保険に加入する被保険者が医療の必要な状態になったとき医療費を保険者が一部負担する制度をいう。

日本では「国民皆保険」とされ、生活保護の受給者などの一部を除く日本国内に住所を有する全国民、および1年以上の在留資格がある日本の外国人は何らかの形で健康保険に加入するように定められている(≠強制保険)。

沿革


日本で最初の健康保険制度は、第一次世界大戦以後の1922年(大正11年)に初めて制定され、1927年(昭和2年)に施行された。元は鉱山労働などの危険な事業に就く労働者の組合から始まったこの制度は徐々にその対象を広げ、市町村などが運営する国民健康保険制度の整備により“国民皆保険”が達成されたのは1961年(昭和36年)である。

健康保険の種類


被用者保険

  • 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ) - 健康保険組合を持たない企業の従業員で構成される。2008年(平成20年)9月までは社会保険庁が政府管掌健康保険(政管健保)として運営していたが、現在は全国健康保険協会が運営している。
  • 組合管掌健康保険(組合健保) - 企業や企業グループ(単一組合)、同種同業の企業(総合組合)、一部の地方自治体(都市健保)で構成される健康保険組合が運営。平成22年4月1日現在、1462の健康保険組合が存在する。
  • 船員保険 - 船舶の船員。健康保険部分と労災保険の船員独自給付部分。かつては社会保険庁が運営していたが、2010年(平成22年)1月1日からは全国健康保険協会(船員保険部)が運営している。
  • 共済組合 - 国家・地方公務員、一部の独立行政法人職員、日本郵政グループ社員、私立学校教職員。民間で言う厚生年金制度も併せ持っている。
  • 自衛官診療証 - 自衛官予備自衛官等及び防衛大学校学生)等において公費で診療を受給される者への保険給付、防衛省管轄公務員・国民が支払う健康保険料の代わりに予め俸給の1.6%が給与から控除されており、自衛隊病院での治療は医療の現物支給で無料、民間の医療機関に受診する場合は3割分自己負担が発生する。尚自衛官診療証を使用して医療を受給する場合、予め所在駐屯地業務隊衛生科長(業務隊が設けられていない駐屯地は駐屯地の基幹部隊における衛生科に準ずる組織の長若しくは衛生担当者等)に届け出て受領するか、受診後に事後報告で一定期間までに報告する義務があり、一定期間後の段階で報告を怠ると公費より支出された医療費を返還しなければならない規則がある。

地域保険


すべての個人事業主、協会管掌健保の任意適用事業所とする認可を受けていない個人事業主の従業員、無職者(任意継続被保険者と後期高齢者医療確保法に該当する者及び生活保護をうけている者を除く)が加入する。

  • 国民健康保険(国保) - 市町村と東京都23区の各区が行っている。
  • 国民健康保険組合 - 自営業であっても同種同業の者が連合して、国民健康保険組合を作ることが法律上認められている
    • 国民健康保険は被保険者の払う保険料のほか、国庫支出金、都道府県支出金、組合保険からの老人保健拠出金や退職者給付拠出金などでまかなわれている。年齢構成的に高齢者が多いため、保険料(保険税)は高く、市区町村によって大きな差がある。
    • 国民健康保険の保険料は所得等によって保険料が変わり、その計算方法は以下のような場合が多い。
      • 【保険料】=【(前年世帯総所得-基礎控除額)×所得割保険料率】+【均等割額×被保険者人数】+【世帯平等割額】+【資産税額×資産割率】
      • 保険料率は各市区町村によって大きく異なるが、概ね5~10%程度である。
      • 均等割額や世帯平等割額も各市区町村によって大きく異なる。
      • 資産税額については固定資産税の税額のことであり、その一定割合が賦課されることになるが、この制度については特に関東の自治体で採用している場合が多い。
      • 賦課限度額や保険料軽減制度が設定されていることが多い。
      • 本来の保険料(「医療給付分」)の他に「後期高齢者支援金分」や「介護納付金分」(40~64歳の被保険者のみ)が賦課される。

後期高齢者医療制度

詳細は後期高齢者医療制度

75歳以上の者と後期高齢者医療広域連合が認定した65歳以上の障害者を対象とする医療保険制度(ただし、生活保護受給者を除く)であり、2008年4月1日からスタートした。

保険者は各都道府県ごとの全市町村で構成される後期高齢者医療広域連合であり、財源は被保険者の払う保険料、健康組合等が拠出する後期高齢者交付金、国、都道府県、市町村の補助や負担金により担われる。

ここでは、仕組みについては組合健康保険(組合健保)と協会管掌健康保険(協会けんぽ)を対象に記載する。保険診療に際しては、組合健保や協会けんぽ以外の健康保険も基本的に同一のルールに基づいている(医療機関を受診した際の本人の自己負担比率などの細部は異なる場合がある)。

(参考)生活保護(医療扶助)

生活保護受給者のうち被用者保険の対象者でない者については、保険制度によらずに公的扶助制度により生活保護の一種として医療の提供が行われる。

適用事業所


健康保険への加入は企業単位でなく、事業所(本社、支社、工場など)単位で行われ、健康保険が適用となる事業所は、加入が義務付けられている事業所(強制適用事業所)と、厚生労働大臣の認可を受けて加入する事業所(任意包括適用事業所)がある。

  • 強制適用事業所
    • 法人事業所
    • 個人事業所のうち、飲食業・サービス業・農林漁業等を除く一般の事業所で従業員が5人以上の事業所
  • 任意包括適用事業所
    • 個人事業所のうち、飲食業・サービス業・農林漁業等の事業所
    • 個人事業所のうち、飲食業・サービス業・農林漁業等を除く一般の事業所で従業員が5人未満の事業所

協会管掌健康保険の場合、基本的には事業所単位で適用されている。(都道府県を越えて事業所所在地が移転した場合には管轄の全国健康保険協会の支部が変わるので保険証を交換する。その他、同一都道府県内での事業所所在地の移転や、被保険者が(都道府県を越えるか否かに関係なく)転勤する場合には、基本的には保険証は交換しない)
なお、組合健康保険の場合は法人(企業)一括の単位で適用されている。

給付の対象者

被保険者


事業所が健康保険の適用を受けた場合、労災保険や雇用保険とは異なり、法人から労働の対償として報酬を受け取っていれば、法人の役員も含むすべての被用者(一般の従業員)は原則として被保険者となる。短時間就労者(パートタイマー)として使用される者の加入については、身分関係ではなく、常用的使用関係の有無により判断される。具体的な取扱い基準については、次のようになっている。

  • 1日又は1週間の勤務時間が、その会社で働いている一般の従業員の勤務時間の概ね4分の3以上であること。
  • 1ヶ月の所定勤務日数が、その会社で働いている一般の従業員の概ね4分の3以上であること。

上記のいずれにも該当する場合、被保険者となる。

以下の場合は日雇特例被保険者となる。ただし、適用事業所等において引き続く2月間に通算して26日以上使用される見込みのないことが明らかであるときとして年金事務所長等の承認を受けた場合はこの限りではない。詳細は、日雇健康保険で。

  • 日々雇用される者で1ヶ月未満の者
  • 2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
  • 季節的業務(4ヶ月以内)に使用される者
  • 臨時的事業の事業所(6ヶ月以内)に使用される者

なお、健康保険の加入者は退職後も「任意継続被保険者」として最長2年間は被保険者となることができる。(下記の「退職後の健康保険」を参照)

被扶養者


被用者保険の被保険者によって生計を維持されている者は、保険者の認定を受けることにより被扶養者としてその被用者保険の適用を受けることができる。保険料免除の一類型であり、被扶養者に保険料の負担はなく、被扶養者の有無、増減で被保険者の保険料に変動はない。元来は収入を得られない子供や障害者、長期入院者、専業主婦、年老いた親などが想定されていたが、家族や社会環境の変化などにより、その態様は変化している(専業主夫、リストラされた夫、資格試験受験生、いわゆるフリーターなど)。60歳未満の配偶者は、被扶養者認定とほぼ同時に国民年金第3号被保険者になる。国民健康保険には被扶養者の考え方はなく加入者全員が被保険者になるため、保険料減免制度によって対応している。
被扶養者として認定される条件としては、

  • 被保険者から三親等内の親族
  • 年収130万円未満(60歳以上の者等については年収180万円未満)で、被保険者の年収の1/2を超えないこと
  • 祖父母・父母・配偶者・子・孫・弟妹以外の者の場合は同一世帯に属していること
  • 祖父母・父母・配偶者・子・孫・弟妹で同居していない場合は被保険者から生活可能な額の仕送りを受けていること

が定められている。

ここで言う年収とは、給与、年金、恩給、不動産収入等、定期的な収入である。給与の場合は、勤労の対価として支払われているものすべてが対象であり、諸手当・交通費込み、税引前の額である(被保険者の保険料算定における報酬と同様)。預貯金、相続による一時的な収入、負債などは収入条件の判定から除外される。

協会けんぽの場合、被扶養者の申請の際に通常必要な物は被保険者及び事業主の印鑑のみである場合が多い(被扶養配偶者が国民年金の第三号被保険者になる場合は被扶養配偶者分の印鑑も必要となる)。というのも、被扶養者の収入については、所得税法上の被扶養配偶者・被扶養親族であることを事業主が確認した場合には、その旨の記載または確認欄に丸印を付ければ添付書類を省略できるからである。
なお、被扶養者等に非課税の収入等がある場合には、当該事業主による確認ができないため添付書類が必要となる。
また、被保険者と同一世帯に属することが認定の要件となる被扶養者等の場合のみ住民票が、被扶養者等が仕送りを受けている場合には仕送りが確認できる書類が必要となる。その他、事例により添付書類が異なるため、事前に年金事務所等に確認をすることが必要である。

健康保険組合や共済組合等の場合は要件及び添付書類等が異なっているため、事前に保険者への確認が必要でなる。手続についても、協会けんぽに比べ細かいことが多く、戸籍謄本や高校生の在学証明書が求められることもある。住民票については、世帯全体の証明を求められることが多い。

扶養状況を確認するために扶養現況調査が行なわれる。調査票に回答と収入や居住状態の立証書類を添付して保険者に提出する。収入が多いなど上記法定の認定条件を満たさない場合、調査票の提出がない場合、勤務先の社会保険に加入していた場合は被扶養者資格がなくなる(国民健康保険などに加入する)。扶養現況調査は健康保険の適正な適用に関し重要な役割をしている(不当な社会保険料免除を防ぐ)が、膨大な数の被扶養者について確認を行うため、対応に苦慮している保険者も多い。厚生労働省は1年に1回以上実施するように保険者に指導している。

給付内容


下記に掲げるもののほか、健康保険組合の場合は付加給付がある場合がある。

被保険者本人


  • 療養の給付
  • 入院時食事療養費の支給
  • 入院時生活療養費の支給
  • 保険外併用療養費の支給-保険医療機関等で評価療養選定療養を受けた場合(混合診療が例外的に認められる場合)に支給
  • 療養費の支給-被保険者証を保険医療機関等に提示できないなど保険診療を受けられない場合に、上記の給付に代えて支給を受けられる制度
  • 訪問看護療養費の支給
  • 移送費の支給
  • 傷病手当金の支給-療養のため労務に服することができない場合の所得保障として1日につき標準報酬月額の30分の1の額の3分の2に相当する金額を支給
  • 埋葬料の支給-死亡時に5万円を支給
  • 出産育児一時金の支給-妊娠85日以後の出産時(早産、死産、流産、人工妊娠中絶を含む)に1児につき39万円を支給(海外出産や産科医療補償制度加入の産婦人科などで出産した場合は42万円を支給)
  • 出産手当金の支給-出産のため労務に服することができない場合の所得保障として出産日(または出産予定日)の42日前(多胎妊娠の場合は98日前)から出産後56日の期間1日につき標準報酬月額の30分の1の額の3分の2に相当する金額を支給

被扶養者


  • 家族療養費の支給 - 療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費及び療養費の支給の家族版
  • 家族訪問看護療養費の支給
  • 家族移送費の支給
  • 家族埋葬料の支給
  • 家族出産育児一時金の支給

自己負担金軽減のための支給


  • 高額療養費の支給 - 療養の給付等の自己負担金が著しく高額になる場合に支給
  • 高額介護合算療養費の支給-介護保険の自己負担金とあわせて自己負担金が著しく高額になる場合に支給

保険料


健康保険は、厚生年金保険料と同様、事業主と被保険者で保険料を負担(折半負担)する。組合健保は、協会管掌健保に比べ保険料率が低い組合が多いが、中には協会管掌健保の保険料率を超える財政基盤の脆弱な組合が存在する。保険料は被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額に保険料率を乗ずることにより計算される。保険料額=標準報酬月額×保険料率

健康保険法で、報酬とは「通勤交通費、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものをいう(健康保険法第3条第5項)。※給与所得が同額の場合、通勤交通費が多いほど、保険料が上がり、実質の手取りが減少する。

  • 標準報酬月額
    • 被保険者の報酬月額に基づき、標準報酬月額等級表の等級区分によって定められる。
    • :(2007年4月現在:58,000円~1,210,000円の47等級。)
  • 標準賞与額
    • 被保険者の賞与(ボーナス等で3ヶ月を超える期間ごとに支給されるもの)に基づき、千円未満端数を切り捨てて決定する(上限額あり)。※全てを報酬と扱う反面、上限を設定し、賞与額が年度累計額540万円を超えた場合は、超過分について保険料賦課の対象にならない。全給与が賞与として支払われる場合は、年度累計額が540万円を超過した部分については保険料賦課の対象とならない。

保険料率の引き上げ


政府管掌健康保険が2008年10月より全国健康保険協会に移管され、それに伴い全国一律だった保険料率も医療費に応じて各都道府県別に決定することとなった。実際には2009年9月より各都道府県別の保険料率となり、8.26%(北海道)〜8.15%(長野県)と定められた。更にその半年後の2010年3月には全国平均で1.14%の大幅な保険料率引き上げが行われ、9.42%(北海道)〜9.26%(長野県)となり、その後も毎年3月に保険料率の引き上げが続いている。

保険診療


※ここからは広義の健康保険(国保、船員保険、共済組合含む)についての内容である。広義の健康保険を利用し医療を受ける「保険診療」は、被保険者が保険者から発行された被保険者証を保険指定された医療機関(保健医療機関)等に提示し、保険医指定された医師歯科医師柔道整復師によって行われる。はり師きゅう師あん摩マッサージ指圧師は医師の同意書により行うことが可能。保険診療には「診療報酬」が定められている。保険診療を受ける被保険者は診療報酬の一部を医療機関に支払い、残りの診療報酬は保険者から医療機関へ支払われる。このとき医療機関が保険者に請求する診療明細をレセプトと呼ぶ。

病院診療所の役割分担の推進を図る観点から、一定規模の病床を有する病院は、他の保健医療機関からの紹介なしに初めてその病院を受診した患者から、初診料に相当する特別料金を徴収することができる。患者が自己の選択により保険制度の想定を超えたサービスを求めたと解釈されることが徴収の根拠であり、厚生労働大臣が認めるものである。この料金は社会的にみて妥当な範囲で病院が定めることができるため、一般に通常の初診料よりは高く、病院ごとに異なっているが、社会保険事務局への届出が必要であることから、健康保険制度の枠組み内の制度であり、病院が自由裁量によって定めるプレミアム料金、ブランド料というわけではない。

保険で認められていない治療法(未認可の治療薬など)や、要医療状態以外に対する医療行為(通常の歯列矯正美容整形など)では健康保険は利用できない。また、保険で認められている治療法であっても、保険を利用せずに治療することが可能である。これらの場合、診療報酬は医療機関の裁量で設定することができ、全額患者の自己負担となる。このような診療を自由診療(保険外診療)と呼ぶ。

一連の医療行為の中で保険診療と自由診療が混在することは混合診療と呼ばれ、保険医が混合診療を行うことは歯科と一部の例外を除いて認められていない(2004年現在、解禁について政府内で検討中である)。事実上の運用としては、診療の一部でも保険で未認可の医療行為が含まれていれば、それは自由診療として全額自己負担となっている。

なお、通常の出産(自然分娩)は保険の適用にならないが(出産育児一時金として1児あたり39万円または42万円が病院等に支給される)、何らかの事情で帝王切開などの異常出産を行ったり、母体に異常が発生したような場合では保険の対象である。

健康保険法第95条により、他者の行為による疾病(暴力、傷害、交通事故)について健康保険で支払った場合には保険者に求償権が生じる。

他の保険制度と健康保険の関係



疾病や負傷が業務や通勤を原因とするために労働者災害補償保険(労災保険)または公務災害の補償が適用される場合、および介護保険の適用により支給がなされる場合には、健康保険が適用されずその支給が全額カットされる場合がある。例えば傷病手当金はその全額が支給されない(健康保険法第55条)。健康保険と、その他の保険(労災、公務災害、介護保険)との関係については、いずれかの制度を選択したり、支給調整が行われると言った性格のものではなく、その他の保険の一からの給付を受けなければならない。例えば労災であるにも関わらず健康保険での給付を受けると、その給付相当額を一旦保険者に返納した上で労災の申請をしなければならなくなる(労災は申請してもすぐには支給されない)ので、二度手間でありかつ一時的にでも療養費等の自己負担をすることになる。なお、「労災隠し」の問題については労働災害の項目を参照のこと。

国・自治体によって行われる他の保険制度であって、労災保険、公務災害による保険、介護保険以外のものの適用がある場合に、当該保険制度により療養費等の支給を受けた場合には、健康保険による給付との間で、支給調整を受ける場合がある。(詳細は、当該保険制度等の規定による)

第三者行為との関係


疾病や負傷が交通事故などの第三者行為を原因とする場合、ただちに健康保険が適用できないと言うわけではない。第三者行為であった場合には、その給付した金額を限度として、第三者行為の相手方に対する損害賠償請求権を代位取得することになる。第三者行為の場合には、健康保険による給付が、疾病等の完治や症状固定などにより終結するまでは、相手方との示談等を行うべきではない(健康保険者からも指導がある)。それは、被害者と相手方との示談等(口約束を含む)を先に行なうことにより、被害者の持つ損害賠償請求権が確定(限定)されてしまい、健康保険が代位取得できる賠償請求権も限定されてしまうからである。訴訟外の先行賠償により(自動車保険の人身傷害など)賠償額を受領し、または訴訟等により賠償額が確定しその受領を受けた場合には、その受領額を限度として健康保険からの給付に対して支給調整が行われる。(健康保険法第57条)なお、前述のような、第三者行為と各種保険との関係については、労災保険、公務災害による保険、介護保険においても同様である。

医療機関によっては交通事故など(第三者行為)による負傷等の場合に健康保険での受診の拒否を主張する場合があるが、その拒否には法的根拠はない。健康保険を適用せずに自由診療とすれば、医療機関にとっては同じ診療等であっても診療報酬が比較的自由に決められるため(自賠責または自動車保険に請求する場合、健康保険適用の場合の200%程度になる)、そのような主張は、単に医療機関の収入と経営上の問題である。ただし、労災保険、公務災害に関する保険、介護保険が適用可能な場合には健康保険適用の拒否には法律上の根拠があることになる。

交通事故と健康保険


交通事故の場合も労働災害等に該当しない限りは健康保険の対象になる(労災等の対象になる場合は、労災等の扱いが優先され、健康保険は適用されない)。この場合、加害者がある場合(下記参照)は市町村の国民健康保険課・国民健康保険組合・企業健康保険組合や全国健康保険協会などの保険者に第三者行為による傷病届を遅滞なく提出しなくてはならない。用紙は、各保険者窓口で用意されている。また、医療機関窓口では普通の健康保険と同様に本人負担金分をいったん支払わなければならない。交通事故が自身のみの単独事故ではなく相手がある場合には、レセプト(診療報酬請求書)に「第三者行為」であることを記載しなければならない。この記載がないと、保険者は負担した医療費を交通事故の過失割合に応じて、加害者に請求することができない。

また、勝手に示談等を行ってしまうと健康保険からの給付を受けられなくなる場合があるため、事前に保険者へ連絡を行った方がいい。

医療機関の事情


健康保険利用の利点

  • 交通事故は手続きが煩雑で利害関係も複雑であり、患者がトラブルを起こすと保険会社によっては支払いが滞ったり遅れる場合がある。その点、健康保険を使うと通常の診療報酬と同様に保険者から遅滞なく支払われる。

健康保険利用の難点

  • 健康保険を利用されると治療費全体が低額に抑えられてしまう。医療機関を経営する立場から言えば、高収入を見込める自由診療を望むのは当然のことである。また、手続きなど各種にかかる手間ほど収入にならないため医療機関の治療への熱意を奪うことも難点の1つに挙げられる。

患者の事情


健康保険利用の利点

  • 自動車賠償責任保険(自賠責)の上限が120万円までなので、入院費などで上限を超える治療費がかかり、相手が任意保険に加入していない場合被害者側の過失が大きい場合などは、健康保険を利用した方が被害者としての自己負担を抑えられる。

健康保険利用の難点

  • 自由診療による治療は健康保険での治療より各種の治療制限が少ない。また自由診療は設定額が高額なため、健康保険と同様の治療制限で一部治療費が削られた場合でも治療費総額で補填が利きやすい。被害者である患者は、その自由診療のメリットである過分な初期医療行為を受けられない事になる。

保険会社の事情


健康保険利用の利点

  • 保険会社(加害者)側としては、健康保険を利用する事で自由診療より賠償金総額を低く抑えることが出来る。

健康保険利用の難点

  • 患者の回復が思わしくない場合、患者・医療機関・保険会社3者の間で訴訟に発展することがある。これは自由診療でも同様に起こる事であるが、過分な初期医療行為を受けられない分だけその可能性が高まる。

保険者の事情


健康保険利用の利点

  • 被保険者へのサービス向上につながる。

健康保険利用の難点

  • 協会管掌保険・健康保険組合や一部国民健康保険の保険者は、任意保険未加入加害者への請求ができない場合や請求のコストがかかるため、健康保険を交通事故には使用して欲しくないと考えている。

鍼灸治療と健康保険


マッサージも健康保険で治療を受けられる。ただし、鍼灸施術は点数化された「療養」ではなく「療養費」に分類される。これは保健医療機関以外の医療機関(鍼灸院、接骨院など)において医療行為を受けた場合に、患者自身が治療費全額を負担したのち、自己負担分を除いた額を保健者に請求する(償還払い)ものである。しかしながら利用者の利便性のため、慣例として鍼灸院による代理請求(受領委任)が認められているため、利用形態としては、保険医療機関におけるのと同様に利用者が自己負担分を支払う形になる。しかしながら、保険点数化した「療養」とは本来別のものであるため、実費との併用が認められる。

また、この受領委任払いに関しては、医師からの神経痛リウマチ腰痛頚肩腕症候群頸椎捻挫などの適応疾患である旨の診断結果を記載した同意書またはこれに準じた診断書の交付が慣例となっている。これにより保健者の支払いがスムーズに行われる場合が多いが、法制度上の規定ではない。
また、マッサージ施術に関する同意書は、「関節拘縮」「筋麻痺」など「症状」に対する施術を同意する旨の同意書が一般的である。
両者ともに、認められる施術期間は3ヵ月で、それを越える場合は改めて再同意を得ることが慣例となっている。しかしながら、これも鍼灸業団と保健者との申し合わせであり、法制度上の規定ではない。

退職後の健康保険


被保険者資格を喪失する前日までに継続して2ヶ月以上(共済組合等は「1年と1日以上」の場合が多い)、同一保険者の健康保険への加入期間を有する者は、退職の翌日から20日以内に住所地を管轄する全国健康保険協会の支部や加入していた健康保険組合・共済組合等に申請する事によって最高2年間引き続き健康保険に加入する事ができる(「任意継続被保険者」「任意継続加入員」「任意継続組合員」などと呼ばれる)。※「継続して2ヶ月以上」という要件に関しては、原則として同一保険者であるが、加入していた健康保険組合が解散した場合には、保険者が自動的に全国健康保険協会に引き継がれるので「解散前後合わせて継続して2ヶ月以上」ということになる。

家族等も被扶養者として加入する事ができ、要件は基本的に在職中の被扶養者認定の場合と同様であるが、必要な添付書類が異なる。

協会けんぽの任意継続被保険者の被扶養者申請の際に必要な物は、印鑑(被保険者本人が申請書を自筆する場合のみ不要)、身分証明書(前保険証の記号番号がわかる場合にはその物)、課税証明または非課税証明(各自治体によって名称に差異あり。被扶養者(配偶者も含む)がいれば原則として各人につき必要だが、16歳未満・高校生・大学生・各種学校生については不要)、住民票(同一世帯が要件の被扶養者のみ)、仕送りが確認できる書類(仕送りを受けている場合)である。

健康保険組合や共済組合等の場合は要件及び添付書類等が異なっているため、事前に保険者への確認が必要となる。協会けんぽに比べ細かいことが多く、戸籍謄本や高校生の在学証明書が求められることもある。住民票については、世帯全体の証明を求められることが多い。

前年の所得で保険料の決まる国民健康保険と比べて、保険料が割安になる場合がある(その逆に、割安にならない場合もあるため、住所地の市区町村の窓口で保険料(保険税額)を必ず確認した方がよい)。
なお、任意継続の保険料については、事業主負担がなくなるため、基本的に天引きの金額の約2倍から2.5倍になる(徴収する保険料の上限を設定している保険者もある)。

また、解雇や倒産等、離職の理由によっては国民健康保険の特例対象被保険者に該当し、国民健康保険の方が保険料(税額)が安くなることがあるため、心当たりのある場合は、念のため住所地の市区町村において相談を行った方がよい。

全国健康保険協会管掌健康保険の場合、保険料は初回を除き毎月10日が納付期限となり(土日祝の場合は翌営業日)、未納であればその翌日から資格喪失となる。資格喪失する条件として滞納喪失以外に、死亡・就職がある。被扶養者として他の保険に加入したり、国民健康保険の保険料が安いからといって切り替えることはできないが、実際のところは保険料の納付を故意に行わないことによって被保険者資格を喪失して国民健康保険に切り替える人も多い(特に4月)。なお、健康保険組合や共済組合によっては任意に資格喪失をすることが可能なところも存在する。

保険料滞納喪失後の保険料納付はできないが、保険者が未納について相当な理由があると認めた場合にはこの限りでない。

しかし、原則地震等により金融機関の機能が麻痺した場合など、天災地変等を理由大きな被害が発生した地震などの際に厚生労働省から、被保険者からの申し出により、その資格の復活を認めるよう通知が保険者に出される。最近では新潟県中越沖地震2007年)、岩手・宮城内陸地震2008年)、宮崎県における口蹄疫の流行2010年)の際に出された。とした未納以外は許容されないので、単純な払い忘れ、勘違い、口座引き落としの場合の残高不足、最寄の金融機関のATMが故障した、などの理由では被保険者資格の復活はありえないものとされている。これは、任意継続制度があくまでも任意による継続であるため、保険料納付の他各種届出等の事務を自ら行い、その結果(保険料の納付忘れ等の結果)はすべて自己に帰属するという一種の自己責任の法律論による。自己の責任または意思において資格が喪失したので、審査請求等法的な不服申し立ては正義に反し認められない。

なお、総務省に対しあっせんの申し立てがあったため、1回目についてに資格の復活を認めやすくしている保険者もあるが、だからといって必ず認められるものではないことに留意すべきである。

納付後、同月内に健康保険(協会けんぽ、共済組合、健康保険組合、国民健康保険組合(厚生年金適用事業場に限る))の被保険者となった場合には後日還付される(※ただし資格取得月を除く)。

「特例退職被保険者」制度を設けている健康保険組合がある。厚生年金受給権がある者で、被保険者期間が20年以上または40歳以降10年以上ある者が満75歳まで継続加入できる。特例退職被保険者の保険料は全員同一で、「前年9月末の現役被保険者の標準報酬月額の平均の半分」等を元に算出される。任意性の保険であるため、保険料納付や資格喪失等に関しては任意継続被保険者と共通している。但し、この制度を持つ健康保険組合は全国約1,500組合のうち70弱の比較的大規模な組合だけである。現役世代を圧迫するとして廃止をしたり廃止の検討をしている組合が出てきている。

保険診療の問題点


  • 保険証を使っての治療全般に言えることであるが、健康保険証不正使用による診療費(療養費)詐欺問題がある。例えば、従業員・医療従事者や現在来院していない患者の健康保険証を使用しての患者数水増しである。また国家資格無免許者の治療行為による不正請求が問題視されている。

外国の医療保障制度


ドイツは世界で初めて公的医療保険制度を導入した国として知られるが、ヨーロッパの先進諸国では、加入者の範囲や保険料の高低、税金の投入率等は様々であるがほとんどの国で公的医療保険制度がある。先進国で例外的なのがアメリカとイギリスである。アメリカ合衆国の公的医療保険制度はメディケアと呼ばれる高齢者対象の制度で、高齢者以外は自由診療である。そのため、医療費の窓口負担は非常に高額で、多くの国民は民間保険会社の医療保険に加入しているが、加入者でさえ医療費による破産が多い。また、医療保険未加入者は4000万人以上である。このような状態を脱するために、公的な医療保険の導入などを公約に2009年に就任したオバマ大統領が、公約に沿って公的な医療保険の導入を進め、野党である共和党の強い反対で難航していたが、2010年に国民皆保険制度の導入が賛成多数で決定した。

イギリスはNHS(国民保健サービス)と呼ばれる租税を財源とした医療制度を実施しており、社会保険ではないのが特徴である。

外国で病気やけがで医療機関を受診する場合


外国では日本の健康保険は使えないが、外国でけがや病気になって現地の医療機関を受診した場合、国外で支払った医療費について、帰国してから加入している保険者に請求することのできる海外療養費という制度がある。ただし、手続きには診療内容明細書(診療の内容、病名・病状等が記載された医師の証明書)と領収明細書(内訳が記載された医療機関発行の領収書)、およびこれの和訳文が必要となる上、健康保険から支給される金額は日本での同様の病気やけがの医療費(標準額)と支給決定日の外国為替換算率を基準に算定されるため、外国でかかった医療費が高額な場合は健康保険から戻される割合が低いことがある。また、救急車代(外国では基本的に救急車は有料)などは対象にならないことや、一時的に医療費を立替払いする必要が生じるため、海外旅行傷害保険を契約(クレジットカードによっては標準でセットされていることも多い)しておくと、医療費の請求を保険会社に回すことができ、主要国では現地での日本語によるサポートが受けられることが多い。海外旅行傷害保険から医療費が保険金の形で降りても、健康保険の海外療養費の支給額が減額されることはないとのこと海外療養費について

脚注・参照


関連項目


外部リンク



社会保険
医療保険



出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


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