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ロシアで発生した暴動の様子
フーリガン (hooligan) とは、サッカーの試合会場の内外で暴力的な言動・行動を行う暴徒化した集団のことを指す。
語源
語源には、明確ではないがいくつかの説がある東本 2002、123頁安藤、石田 2001、14頁。
- 「個人名」説
- :19世紀のロンドンで非道の限りを尽くしていたアイルランド系の一家の姓、フーリハン (Hoolihan) に由来しているボダン 2005、17頁ライゼナール 2002、84頁。
いずれかが語源となり、「乱暴者」を意味する一般的な英語として定着した。本来の意味の「フーリガン」とは公共物を破損させたり、悪戯をする者のことを指す東本 2002、123頁が、いつしかサッカースタジアム内外での暴力行為と破壊活動を行う者の総称として「フーリガン」と呼ばれるようになったという。また、「フーリガン」という用語が国際的に認知される以前は、英語で「乱暴者」を意味する「ロウディーズ」(Rouwdies)安藤、石田 2001、12-13頁、「悪漢」を意味する「ルフィアン」(Ruffian)などが使用されることもあった。
特徴
フーリガンの目的とは、労働者階級の者たちが鬱屈した生活のウサ晴らしとして東本 2002、126頁小林 2005、128頁、大声を立て暴力を行使するのだとされる。その際、試合結果に興奮した者が感情を爆発させ偶発的に暴動を発生させるのではなく安藤、石田 2001、14-15頁、暴力行為を目的とする者が試合内容に関係なく意図的に暴動を引き起こすのだというミニョン 2002、127頁。特徴としては以下の物が挙げられる。
- アルコールを飲用し酩酊状態にある安藤、石田 2001、23頁
- 10代から20代の男性により構成される安藤、石田 2001、17頁
- いくつかの小集団が示し合わせたかのように集団行動を採り暴徒化する
- 試合日時の如何、試合内容の如何を問わない安藤、石田 2001、18頁ボダン 2005、22頁
- スタジアム、近隣都市、交通機関など場所を問わない
- 石、煉瓦、ガラス瓶、木材、ナイフなどを武器として携帯し乱闘や破壊活動を行う安藤、石田 2001、19頁
- 外国人排斥を掲げ、宗教差別的態度を採り安藤、石田 2001、20-22頁ボダン 2005、33頁仲間同士で団結する。
またはその国や地域などが持つ民族対立安藤、石田 2001、20-22頁、宗教対立、経済格差などの社会問題や政府に対する不満、国民戦線「荒れる"紳士"に不況の影 サッカー暴動の傷跡深い英国」『読売新聞』1985年6月4日夕刊 2版 3面やネオナチ安藤、石田 2001、26-27頁などの極右勢力との結びつき、一部の者が起こす反社会的行為に対する集団心理的同調などが挙げられ、具体的にフーリガンには大きく3つの種類に分類される。
- 試合の観戦ではなく、暴れることそのものが目的となっている者小林 2005、129頁。
- 自ら暴動に加わらず、騒ぎを起こすことだけを目的とする扇動者ライゼナール 2002、200-201頁安藤、石田 2001、40頁。
- 自ら騒ぎを引き起こすことはないが、他人が騒ぎ始めればその場の空気で加わる者。
特に1と2のタイプは、警察当局から厳重に監視されており、要注意人物についての情報交換は、国際大会の参加チームなどの状況に応じて各国警察の間で随時広く行われている。
罰則
FIFAなどは、試合自体の禁止や延期処置だけでなく、この様な行為を行ったサポーターに対しては試合会場内への入場禁止処置、更にはチームに対しても罰金や無観客試合、一定期間の国際大会などへの出場禁止といった罰則を科している。
各国の事例
スポーツ競技場における観客の暴動は古代からの問題であり、59年にローマ帝国のポンペイで行われた剣闘士の試合において暴動が発生し死傷者が発生した事件ボダン 2005、19頁や、532年に東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルでチャリオット(戦車)を使ったレース競技がきっかけとなり発生したニカの乱などが記録として残されているが、現代社会に通ずる「フーリガニズム」と類似した事例は1899年にスコットランドで発生しているボダン 2005、20頁。
- 暴動を取り締まる警官隊
- イングランドのサポーターによる暴動は1960年代頃から頻発するようになリメイソン 1991、47-48頁フランシス、ウォルシュ 2001、5頁、1974年5月29日にオランダのロッテルダムで行われたUEFAカップ決勝第2戦・フェイエノールト対トッテナム・ホットスパー戦メイソン 1991、49頁ライゼナール 2002、161頁や、1975年5月28日にフランスのパリで行われたUEFAチャンピオンズカップ決勝・バイエルン・ミュンヘン対リーズ・ユナイテッド戦、1980年6月12日にイタリアのローマで行われたUEFA欧州選手権1980グループリーグ、イングランド対ベルギー戦などで暴動を引き起こした。
- 1985年5月29日にベルギーのブリュッセルで行われたUEFAチャンピオンズカップ 1984-85決勝において39人が死亡した事件(ヘイゼルの悲劇)を契機に抜本的なフーリガン対策が行われるようになり、監視法の制定や関係機関による取り組みが行われた結果、1996年前後にはスタジアム内でのフーリガンによるトラブルは過去の出来事と考えられるようになったライゼナール 2002、199頁。その一方で同年にイングランドで開催されたUEFA欧州選手権1996準決勝のイングランド対ドイツ戦安藤、石田 2001、40頁。1998年にフランスで開催された1998 FIFAワールドカップ1回戦のイングランド対アルゼンチン戦安藤、石田 2001、38頁。2000年4月に行われたUEFAカップ準決勝第1戦のガラタサライ対リーズ・ユナイテッド戦安藤、石田 2001、37頁、同年5月17日に行われた同大会決勝・ガラタサライ対アーセナル戦。同年にオランダとベルギーで共同開催されたUEFA欧州選手権2000ではグループリーグ第2戦のイングランド対ドイツ戦安藤、石田 2001、34-36頁など、スタジアム外でのトラブルは発生し続けているライゼナール 2002、200頁。
- 暴動に関与する者達は「ブッシュワッカーズ」(ミルウォールFC)フランシス、ウォルシュ 2001、6頁、「レッド・アーミー」(マンチェスター・ユナイテッド)、「ヘッドハンターズ」(チェルシーFC)などといった集団を名乗り、テディ・ボーイミニョン 2002、131頁やモッズやスキンヘッズミニョン 2002、132頁といったその時代ごとの若者文化と結びついた服装を身につけていたが、1980年代頃から警察当局による取締りが厳しくなると、その監視を逃れるために、デザイナーブランドのシャツや靴といった一般の観客層と変わらない服装を身に付けるカジュアルと呼ばれる形態を採っているミニョン 2002、135頁。
- オランダでは1970年代にイングランドから「フーリガニズム」が伝播し、1974年5月29日にロッテルダムで行われたUEFAカップ決勝第2戦・フェイエノールト対トッテナム・ホットスパー戦が、国内でフーリガニズムが確認された初の事例とされているライゼナール 2002、95頁。その後、国内では多くのクラブで暴力的な集団が登場しライゼナール 2002、96頁、ある調査によると1970年代に国内で行われた3060試合のうち、6.6%にあたる201試合で何らかのトラブルが発生した。トラブル件数の17%はフェイエノールト、15%はFCユトレヒトの集団によって引き起こされたことから、両者は最も危険な存在として知られた。
- 1985年に隣国のベルギーで発生したいわゆる「ヘイゼルの悲劇」以降、1987年10月に行われたUEFA欧州選手権1988予選のオランダ対キプロス戦での爆発物事件などトラブルが頻発したライゼナール 2002、97-99頁。これらの問題に対処する為に「サッカーにおけるバンダリズムに関する全国協議会」(LOV)や、「サッカーにおけるバンダリズムに関する中央情報機関」(CIV) による研究と対策が採られ、LOVやCIVと連携した警察当局による取締りの強化が行われている。
- 米国ではアメリカンフットボールやバスケットボールの試合会場で時折発生する事がある安藤、石田 2001、15-16頁。特にNCAAのカレッジフットボールなどでその様な状況に陥りやすく、審判・監督・選手・他の観客への暴力行為、民家・店舗への放火や略奪行為、用具の破壊などを行っている。ただ、こういった一連の行為に対しては主催者側なども警備員の増員や監視カメラによる監視、用具の改良をするなどして対処している。2003年11月23日 - 25日、ハワイ大学対シンシナティ大学、ワシントン大学対ワシントン州立大学、クレムソン大学対サウスカロライナ大学、ノースカロライナ大学チャペルヒル校対フロリダ州立大学、カリフォルニア大学バークレー校対スタンフォード大学の各試合会場でゴールポストを破壊するなどした暴動が発生。また、オハイオ州立大学対ミシガン大学では試合後に勝利を祝う学生達が深夜に路上にあふれて暴徒化、駐車中の自動車20台を破壊した「第11回 アメリカン・スポーツ・NOW」『Sportiva』 2003年3月号 、集英社。なお、米国ではこの様な状況を単に“暴徒化”や“暴動”と呼んでおり、“フーリガン”などといったように明確な定義はしていない。
- 日本国内では「フーリガン」という言葉は、前述のような暴力と破壊活動を目的とした不良集団としてではなく、単に「試合に熱狂するあまりに騒動を起こすスポーツファン」として広義に扱われる事がある東本 2002、120頁。こういった観客によって起こされる一連の騒動は日本国内でも古くから発生しており、特にプロ野球で過去に発生した1950年代の平和台事件や1970年代の遺恨試合騒動などが、一般的にも知られている事例であるが、「フーリガン」といったように定義付けられるものか否かは不明である。
- Jリーグでは1993年の創設以降、試合内容に興奮したサポーター同士による衝突や小競り合いなどの事例は毎年数件程度発生しており、衝突事件としては2005年4月23日に日立柏サッカー場で行われた柏レイソル対名古屋グランパスエイト戦「法整備とともにサポーターとの対話を--Jリポート 柏サポーター乱闘事件でJリーグ動き出す 再発防止へ向け何が必要なのか」『週刊サッカーマガジン』2005年6月7日号、44-45頁、2008年5月17日に埼玉スタジアム2002で行われた浦和レッドダイヤモンズ対ガンバ大阪戦、人種差別事件としては2010年5月15日に宮城スタジアムで行われたベガルタ仙台対浦和戦、2011年5月28日に行われた清水エスパルス対ジュビロ磐田戦などが挙げられるが、2008年9月20日に日立柏サッカー場で行われた柏対鹿島アントラーズ戦での鹿島サポーターによる試合妨害などの問題行動について一部メディアにより「欧州のフーリガンを想起させる深刻な事態」と報じられた青柳庸介「柏--鹿島戦 サポーター乱闘」『読売新聞』2008年10月29日朝刊27面。
- また2002 FIFAワールドカップの際に国外からのフーリガンの大量流入が懸念されていたが、フーリガンの入国阻止を目的として2001年11月13日に出入国管理及び難民認定法が、フーリガン条項(第5条第1項第5号の2、24条4号の3)の規定を加えて改正され、2002年3月1日より施行された。入国管理局と警視庁の連携により、同年5月26日から決勝戦終了までに65名のフーリガンの入国を拒否した。
脚注
関連項目
- ヴァンダリズム
- 暴動
- サッカー文化
- ミルウォールFC:イングランド1部(3部リーグに相当)に所属するサッカークラブ。“フーリガンの代名詞”といわれるほどサポーターの気性の激しさで悪名が高い。チーム発足以来、過去には幾度となくサポーターの暴動により逮捕者を出したり、暴動の結果として試合が中止、延期になることがあった。
- ローリガン:フーリガンの反対語。主にデンマークの様な紳士的で穏やかなサポーターを指す。
参考文献