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パクス・アメリカーナ()とは、「アメリカの平和」という意味であり、超大国アメリカ合衆国の覇権が形成する「平和」である。ローマ帝国の全盛期を指すパクス・ロマーナ(ローマの平和)に由来する。「Pax」は、ローマ神話に登場する平和と秩序の女神である。
定義
始まった時期については、以下の3説が一般的である。
特徴
- アメリカが湾岸戦争で勝利を収め(1991年2月)、ソ連が崩壊した(同年12月)後は、完全にアメリカ1国のみによる「平和」である。これは「アメリカ一極体制」と呼ばれる。
- 第一次大戦終結後から第二次大戦までは、アメリカ以外にもイギリスやフランスなどが莫大な植民地を持っており、3つ以上の植民地帝国がしのぎを削る多極体制であった。
- 第二次大戦終結後の冷戦時代においては、アメリカとソ連の2国が覇権を握る両極体制の下で「平和」な状況が継続したものであり、これを「パクス・ルッソ=アメリカーナ()」と称することもある。しかし、この時期の「平和」の本質は、核の抑止力にあったため「核の平和()」とも称される。
冷戦時代
「パクス・アメリカーナ」とは、ソ連を盟主とする社会主義圏(東側諸国)に対抗する自由主義圏(西側諸国)の盟主として、アメリカ合衆国が北大西洋条約機構(NATO)や日米安全保障条約などを通して西側世界の軍事を引き受け、「核の傘」で資本主義諸国と西側世界を保護するとともに、マーシャル・プランなどによって西欧諸国の、エロア資金などによって日本・琉球・台湾の復興を支え、「ドルの傘」のなかで自由主義経済を編成する体制であったと概括することができる。ただし、より正確に世界経済システムとしての性質を考慮すると、ドルの傘(ドル体制)、すなわち世界一の金保有量を誇ったアメリカの「金ドル本位制」の側面と、IMF・GATT体制(「ブレトン・ウッズ体制」)という側面の2つにまとめることができる。後者は、「自由・無差別・多角主義」をスローガンとし、各国間の貿易や金融取引における障害を撤廃し、相互に自由平等な立場で競争をおこなうことによって、世界貿易の拡大、開発途上国の開発、国内の完全雇用を実現しようというものであった。
冷戦終結後
平和とは裏腹な世界情勢
冷戦が終結すると、ヨーロッパにおける旧共産圏の諸国を含める形で「アメリカによる平和」は広がった。しかし、その後もなお世界各地(主にアジア、アフリカ、ヨーロッパ旧共産圏、ラテンアメリカ)において地域紛争やテロリズムは絶えてはいない。例えば、アフリカにおいては、ルワンダ大虐殺やダルフール虐殺など、人類史上稀に見る大惨事が立て続けに発生している。これはアメリカ自身が、国益にならない事には無関心で介入しない事も原因している(当然と言えば当然ではある)。当のアメリカ自身も2001年のアメリカ同時多発テロ事件によって、ペンタゴンへの攻撃を許す事態が起きてしまっている。また、立て続けに起こした戦争や経済の停滞で弱体化し始めていることから「アメリカによる平和」も終わりを迎えようとしている。
アメリカによる一極支配が弱まる中、2009年1月20日にアメリカ合衆国大統領に就任したバラク・オバマはジョージ・W・ブッシュ時代の政策から大きく転換し、「国際協調」を掲げている。しかし、その裏をかく形で中華人民共和国やロシアの軍拡・勢力圏の拡大を許してしまうのではないかとの懸念もある。これは、米ソデタント時代に見られた現象である。デタントの時期、表面的には両者の緊張は緩和していたが、裏でソ連は極秘裏にスカッド・ミサイルの配備や通常戦力の拡大を行い、アメリカとの軍事力の差を縮めていった。現代の世界情勢においても、今まではアメリカの勢力圏だった南米諸国が左傾化し、ロシアや中国との接近を深め、アメリカは自国の勢力圏を失っている。
また、将来アメリカで共和党の人間が大統領になると、時には武力に訴えてでもアメリカによる一極支配構造を立て直そうとする可能性もある。そして、最終的にはアメリカと中ロの衝突(第三次世界大戦)という最悪の結果を招く可能性もある。ここで重要なのは、アメリカもロシアも中国も、帝国主義的、覇権主義的な性格を持っていることである。中国は台湾に対する領土的野心をあらわにしており、また、ロシアも隣国を自国の「勢力圏」とみなし、親欧米路線を取っているウクライナ、グルジア、そして2009年に入って以降EUへ接近し始めたベラルーシに対して禁輸措置などを行い、強硬な圧力をかけている。そして、アメリカは「自由」と「民主主義」を「人類共通の価値観」として広めることを建前としており、それを支持する保守的なアメリカ人や西側諸国の人(親米保守)も多いが、実際のところはアメリカの国益の追求である。
特徴
パクス・アメリカーナがその他の「超大国による平和」と異なる点が幾つか存在する。
などが挙げられる。
実際、テロリズムや反グローバリズムなどの抵抗を受けながらも、これらの諸概念はアメリカの推進する「グローバル・スタンダード」によって地球全体に浸透しつつあり、これらのアメリカの理想が達成された最終成果として、極めて持続的で安定した世界情勢(平和)が誕生する可能性も言われる。但し、アメリカは、この理念を軍事力によって推進しようとする傾向があると諸外国から指摘され、ノーム・チョムスキーをはじめとして、この実態に警鐘を鳴らす「超大国主導型の世界的安全保障(=パクス・アメリカーナ)」を否定する論者も存在する。
関連項目
- アメリカナイゼーション
- アメリカ帝国
- アメリカ新保守主義
- アメリカ新世紀プロジェクト
- 日米社会20年遅延説
- パクス・ロマーナ
- パクス・ブリタニカ
- パクス・シニカ
- パクス・タタリカ
- 原理主義
- 戦争一覧#冷戦後
- 紛争
- 覇権主義
- 冷戦
- 新冷戦
アメリカ合衆国の国際関係
アメリカ合衆国の歴史 (現代)
ラテン語の成句
平和