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ジェンダーとは
- 文法における性()のこと。
- 生物学的性(、雄雌の別)のこと。
- 医学・心理学・性科学の分野における「性の自己意識・自己認知(性同一性)」のこと中村美亜 「[新しいジェンダー・アイデンティティ理論の構築に向けて—生物・医学とジェンダー学の課題]」『ジェンダー&セクシュアリティ』 国際基督教大学ジェンダー研究センタージャーナル、2006年12月31日。野宮亜紀ほか著 『性同一性障害って何?—一人一人の性のありようを大切にするために』 緑風出版、2011年増補改訂版(2011年3月5日初版第1刷発行)、50頁。山内俊雄著 『性の境界—からだの性とこころの性』 岩波書店、2000年(2001年10月25日第2刷発行)、9–10頁。。
- 社会科学の分野において、生物学的性に対する、「社会的・文化的な性のありよう」、または「女性」と同義として使われる場合がある。
- 社会学者のイヴァン・イリイチの用語で、男女が相互に補完的分業をする本来的な人間関係のあり方。イリイチはその喪失を批判している。
先天的・身体的・生物学的性別を示すセックス()に対する、「社会的・文化的な性のありよう」のことを一般に日本ではジェンダーという埼玉大学教授の長谷川三千子は『論争・少子化日本』(中公新書)P193で「『ジェンダー』とは(生物学的な男女の差を意味する『セックス』に対して)文化的、社会的な男女の差を指して言う言葉である」と定義している。(この場合の「ジェンダー」という用語それ自体には、良い悪いの価値判断を含むものではない)。
一方、欧米においては「gender」は、生物学的性の概念を含み、また文化的な差異とも異なるものとして認められる加藤秀一著『ジェンダー入門―知らないと恥ずかしい』朝日新聞社。
雄と雌を示すジェンダー・シンボル(性別記号)。それぞれ[[火星/' title='オス/' title='ファイル:Combotrans.svg|thumb|right|生物の[[オス'>雄と雌を示すジェンダー・シンボル(性別記号)。それぞれ[[火星'>オス/' title='ファイル:Combotrans.svg|thumb|right|生物の[[オス'>雄と雌を示すジェンダー・シンボル(性別記号)。それぞれ[[火星と金星を表す惑星記号に由来する。
語源と用法
語源は(産む、種族、起源)である。共通の語源を持つ言葉として(遺伝子)、(生殖の)、などがある。「生まれついての種類」という意味から転じて、性別のことを指すようになった。
この生物学的性のイメージを基にして、20世紀初頭には、はフランス語などにおける有性名詞の性による分類ないし分類クラスをさす文法的な用語として用いられるようになっていた。
1950年代から1960年代にかけ、アメリカの心理学者・性科学者ジョン・マネー John Money、精神科医ロバート・ストラー Robert Stoller らは、身体的な性別が非典型な状態の性分化疾患の研究において、その当事者に生物学的性別とは別個にある男性または女性としての自己意識、性別の同一性があり、臨床上の必要から「性の自己意識・自己認知(性同一性)」との定義で “gender” を用いた日本社会学会・社会学事典刊行委員会 『社会学事典』 丸善、2010年(2010年7年30日第2刷発行)、408頁。中村美亜 「[新しいジェンダー・アイデンティティ理論の構築に向けて—生物・医学とジェンダー学の課題]」『ジェンダー&セクシュアリティ』 国際基督教大学ジェンダー研究センタージャーナル、2006年12月31日。山内俊雄 「性同一性障害とは—歴史と概要」『Modern Physician 25-4 性同一性障害の診かたと治療』 新興医学出版社、2005年(2005年4月15日発行)、367–368頁。。1960年代後半から “gender identity” とも用いられた(以降も医学・性科学では “gender (identity)” は「性の自己意識・自己認知(性同一性)」の定義で用いられており、後の社会学において定義される意味とは異なる)。
1970年代日本社会学会・社会学事典刊行委員会 『社会学事典』 丸善、2010年(2010年7年30日第2刷発行)、408頁。より、一部の社会科学の分野においては生物学的性よりもむしろ社会的性の意味で用いられるようになった。しかし1970年代の時点では、とをどのような意味で用いるかについて合意形成は存在しなかった。たとえば1974年版のというフェミニストの本においては、「生得的な」と「学習された(性的役割)」という現代とは逆の定義がみられている。しかし同著の1978年の版ではこの定義が逆転している。1980年までに、大半のフェミニストはは「社会・文化的に形成された性」を、は「生物学的な性」として使用するようになった「ジェンダー」という言葉について。このように、社会科学の分野においてジェンダーという用語が社会・文化的性別のこととして用いられ始めたのは比較的最近のことであることが分かる。
しかし現在、英語圏では、は生物学的な性も社会的な性も指す単語として用いられる。前者の場合、単に「」の婉曲あるいは公的な表現として使用されていることになる。例えば、女子のスポーツ競技において、生まれつきの性別を確認するために染色体検査が行われることがあるが、これを指す用語として英語ではジェンダーベリフィケーション(「」)という用語を用いる。
複数の英英/英和辞書においては、第一に「言語学的性(文法上の性)」として、第2に、古くから使われてきた「生物学的性別()」として記述されている(出典:ジーニアス英和辞典、ウェブスターの辞書)。それらに続き、社会科学の分野において用いられる「社会的・文化的役割としての性」という意味の語として記述がなされることがある(出典:英語版ウィキペディア)。「言語学的性」とは、例えば男性を代名詞で「、女性をと分けて表記するようなことである。「生物学的性()」とは、ロングマン現代英英辞典によれば、「(男性または女性であることの事実)」と説明され、「(男性)」は「子供を産まない性」、「(女性)」は「子供を産む性」と定義される。またヒト以外の動物の雌雄を記述する場合にも用いられる。「社会的文化的役割としての性」とは、その性()から想起される「男らしさ」「女らしさ」といった様々な特徴のことである。
ジョーン・W・スコットの著書『ジェンダーと歴史学』によれば、近年、欧米の社会学において、という用語はほとんど(7割程度)の場合、「女性」と同義で使用されている(例: 女性とその経済力向上)。
「」から「ジェンダー」への誤訳
日本において「ジェンダー()」は、「社会的文化的性差」と誤訳され、間違ったまま用いられる例がいまだに残る。シカゴ大学のフェミニスト、山口智美氏は『バックラッシュ!なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?』の中において(281ページ)以下のように語っている。『「ジェンダー」定義をめぐる混乱についても、もともと、ジェンダーの定義が導入時に「社会的文化的性差」と誤訳されてしまった、という問題が大きいと思う。英語でいう「ジェンダー」は「性差」ではなく、「社会的・文化的な性のありよう」といった意味合いだ』。
医学の分野では「生物学的な性」として使われる「」は、社会科学の分野において時々「社会的・文化的な性のありよう」の意味で現在使われているが、日本におけるように「社会的文化的性差」と翻訳したり、「差別」と同義的使われ方をするのは明確な誤謬であり、今後の是正が必要である。
日本政策研究センターより、「」を「社会的・文化的に形成された性別」と定義することは誤りであるとの指摘がなされており日本政策研究センター、また実際にこのように定義された英英辞典は無い。
「社会的文化的な性のありよう」という意味における『ジェンダー』の例
具体例
- 男は外で働き、女は家を守る。
- 女は化粧をし、男はしない。
- 男はズボン、女はスカート。
- 女は乳房を見せない、男は見せてもよい。
- 男は青、女は赤
- 片付けられない女は話題にされる、片付けられない男は話題にされない。
- 男性は女性に手をあげてはいけない、女性は男性に手をあげても良い。
- 男は髪が短い、女の髪は長い。
社会的・文化的性の意識の変化
第二次世界大戦の間、[[輸送機の部品を作るために工場で労働する女性。社会と同様に、「ジェンダー」(ここでは社会的・文化的性としての意味)は絶えず変化する。 例えば、ロンドン大学のロバート・プローミンの調査によれば、性によって有意差があるとされる身体・精神機能でも、実際の分布上はその80%は重なっているのが普通である。このデータが表すように、農事主体の家事的労働では家族は男女とも家の周囲で労働することはある程度可能であった。また、総力戦となった第二次世界大戦時の連合国および枢軸国では、男性が徴兵され戦場に出向いている間、女性が工場労働に従事することになり、その後に労働力として社会参加することの大きなきっかけとなった。
戦争とジェンダー
- 比較的多くの国家で男性に対してのみ徴兵制が課されている。一方、「男性同盟が戦争を起こす」という言説を行い、「ジェンダー理論が平和を創る」とする言説がある『戦争とジェンダー―戦争を起こす男性同盟と平和を創るジェンダー理論』 若桑みどり著。
生物学とジェンダー
オス(左)とメスのショウジョウバエ D. melanogaster。 メスは二本のX染色体の存在により決定される。
人間だけでなく、動物、植物、昆虫などの性()を表現するために用いる。性交との混同を避ける為に、生物学の分野では意識的に用いる必要があったからである。このため、欧米では一般でもジェンダー()は、性()と同義の言葉として婉曲的に用いられるようになった。生物学者は、研究対象が生物学的に雄であるか雌であるかを表現する為にジェンダー()という用語を使う。スポーツ選手の生物学的な性別検査は英語で「ジェンダーヴェリフィケイション()」と呼ばれ、人間の生物学的な「男女の産み分け」を「ジェンダーセレクション()」と呼ぶ宗教とジェンダー
表現の自由とジェンダー
本や雑誌などのメディアや、感想を述べるときなど、人やその行動に対して「男らしい」「女らしい」あるいは「女らしくない」「男らしくない」と表現する機会は多々ある。これはジェンダーフリーの観点からは望ましいことではないともいえるが、表現の自由の観点から一方的にこれらの表現はだめだとするわけにもいかない。
ジェンダーチェック
主に税金や組合費で運営される様々な団体が、「ジェンダーチェック」と題して質問項目を並べ、多様な個人の意識や心の中の思いに関して「これは望ましい」「これは望ましくない」という一定の評価を与え、心の内面に関する評価結果を階層ごとに区別する活動を行っている団体で、以下の団体が存在している。
- 日本労働組合総連合会
- こうち男女共同参画センター
- はちのへウィメンズ アクション
- 青森県男女共同参画センター
- 新日本婦人の会
ジェンダーチェンジャー
生物学的な「性器」のイメージを基本として、日本語でも電子機器ケーブルの接続で「オス」・「メス」の表現がとられる。特に接続の凹凸を変更するためのつなぎ部分を「ジェンダーチェンジャー」と呼ぶ。
関連文献
- 加藤秀一著『ジェンダー入門―知らないと恥ずかしい』朝日新聞社 (2006/11)ISBN 4-02-330373-9
- 上野千鶴子・宮台真司・斉藤環・小谷真理他共著 『バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?』 双風舎 (2006/06/26) ISBN 4-902465-09-4
- 川本敏編『論争・少子化日本』中公新書(2001/05/15)ISBN 4-12-150006-7
- 渡辺真由子著『オトナのメディア・リテラシー』 リベルタ出版 (2007/10)
- アン・ファウスト=スターリング著『ジェンダーの神話―[性差の科学]の偏見とトリック』池上千寿子ほか訳 工作舎 (1990/5)ISBN 4-87502-167-4
- ロンダ・シービンガー著『ジェンダーは科学を変える!?―医学・霊長類学から物理学・数学まで』小川眞里子ほか訳 工作舎 (2002/1)ISBN 978-4-87502-362-3
- トマス・ラカー著『セックスの発明―性差の観念史と解剖学のアポリア』高井宏子ほか訳 工作舎 (1998/4)ISBN 4-87502-294-8
脚注
関連項目
- 女性学
- 男性学
- フェミニズム
- フェミナチ
- ラディカル・フェミニズム
- ジェンダー・フェミニズム
- メンズリブ
- アンチ・フェミニズム
- マスキュリズム
- ダイバーシティ・マネジメント
- 国際ジェンダー学会
- ジェンダー史学会
外部リンク
- 男女平等と女性の経済力促進, 世界銀行"Gender and Development"
- ジェンダーイベント, 世界銀行"Gender and Development"