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ウェルテル効果()とは、マスメディアの自殺報道に影響されて自殺が増える事を指し、この効果を実証した社会学者のPhilipsにより命名された平成15年度厚生科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)自殺と防止対策の実態に関する研究研究協力報告書

とくに若年層が自殺報道の影響を受けやすい
なお、実在の人間の自殺のみならずテレビドラマなどのフィクションにおける自殺もウェルテル効果を呼び起こすかどうかについては研究によりまちまちである

「ウェルテル」効果という名は、若き頃のゲーテの名著『若きウェルテルの悩み』(1774年)に由来する。物語の中で主人公のウェルテルは最終的に自殺をするが、これに影響された若者達がウェルテルと同じ方法で自殺した事が、数多く報告されている(横浜市立大学医学部精神医学教室)。なお、これが原因となり、いくつかの国でこの本は発禁処分となった

発見

精神科医のMotto(1967)は今日でいうウェルテル効果を確かめる為、新聞のストライキがあった期間には自殺率が減少するかどうかを調べたが、彼の仮説はデトロイトでしか証明されなかった上、彼の手法には様々な問題点が指摘されている

その後、社会学者のPhillips (1974)は、ニューヨークタイムズの一面に掲載された自殺と1947年から1967年までの全米の月刊自殺統計を比較する事で、報道の自殺率の増加への影響を証明し、これをウェルテル効果と名づけた

彼は前述の調査に基づき、自殺率は報道の後に増えていて前には増えていない事、自殺が大きく報道されればされるほど自殺率があがる事、自殺の記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が増加したことを示した。これらはいずれも報道の自殺率への影響を示唆する。Phillipsの業績はその後Wasserman (1984)をはじめとした幾人かの追試によっても正しい事が確認された
またPhillips は、新聞のみならずテレビに対しても同様の効果がある事を確認している

なお別の可能性として、報道が影響を与えてるのは真の自殺率そのものではなく検死官が自殺と判断するかどうかというものが考えられるが、Phillipsはこれに対して反証している。実際仮にそうだとすれば報道により検死官が自殺と認定した案件が増えた分、事故死や殺人など自殺以外の死亡数が報道後に減ってなければならないはずだが、統計上は減っていない

またさらに別の可能性として、自殺報道は単に自殺の時期を早めただけで、報道後に自殺した人は自殺報道が無くても遅かれ早かれ自殺したのではないかという可能性も考えられるが、これに対してもPhillipsは反証している。実際仮にそうだとすれば自殺報道直後に自殺数が増えた分その後自殺数が減ってなければならないはずだが、統計上はそのようになっていない

事例

日本における事例


藤村操の自殺に端を発するものである。藤村自身は無名の一高生だったが、自殺は「人生は不可解である」という遺書の内容とともに新聞で大きく取り上げられ、それを真似する青少年が続出して社会問題になった。太宰治の玉川入水も多くの後続者を出した例として有名。また、4月8日アイドル歌手岡田有希子が18歳で自殺すると30名余りの青少年が自殺し、「そのほとんどが、岡田と同様に高所から飛び降りて自殺した」(自殺予防総合対策センター)。そして「この影響はほぼ1年続き、1986年はその前後の年に比べて,青少年の自殺が3割増加」した。衆議院文教委員会で江田五月が質問し採り上げてもいる。

その他にもにもX JAPANhideが自宅で急逝し自殺したと報道されると、ファンの女性の自殺が増え、YOSHIKIなど他のメンバーが警視庁の要請で自殺を思いとどまるように記者会見まで開く騒動となった。

、5月の自殺者、特に20代から30代の女性の自殺が、13日から急増。自殺対策支援センター ライフリンク代表で内閣府参与の清水康之は『考えられる要因は5月12日に起きた「ある有名女性タレント」の自殺、と言うか、その自殺報道だ』政府が取り組むべき自殺対策と指摘した自殺者急増はタレント自殺報道の影響? 内閣府参与が報告

ウィーンにおける事例

ウィーンの地下鉄では未遂を含め年1,2件程度だった自殺者が報道の影響からか1984年頃から急増し、ピーク時には未遂を含め年20件程度まで増えた。その後1987年に精神保健の専門家が自殺報道の方法を定めたガイドラインを策定し、大新聞がこれに従うと、自殺数が目に見えて急減し、再び年1,2件程度まで下がった

韓国における事例


インターネットの普及政策が日本よりも早期であったとされる韓国では、マスコミの記事よりインターネットに流布される情報の方が優越されるネット社会が日本よりも多く構築されている。そのため、2007年に起きたU;Neeの自殺原因を嚆矢とする、インターネット上における中傷が深刻な社会問題となっている。韓国自殺予防協会は、2008年9月8日に遺体で見つかった俳優アン・ジェファンの死亡事件によるウェルテル効果を懸念し、各メディアに対して「メディア報道勧告基準」を送り影響を最小限にして欲しいと訴えていた。報道は逸る憶測を抑えつつ通常より控えめに伝えていたが、同年5月25日の川田亜子の練炭自殺に関する日本での件などと比較して報道した
韓国自殺予防協会、有名人自殺による‘ウェルテル効果’憂慮

インターネット上では誹謗・中傷が相次ぎ書き込まれ、アン・ジェファンの借金について様々な憶測が飛び交い、人気女優チェ・ジンシルが借金のうち半分以上を貸し出していた、などという虚偽の風説に対してネット社会から大きな反発が起こった。この背景には、不況の影響で大繁盛しているヤミ金融が韓国の社会に広まりつつある現状があるとされている韓国の庶民を苦しめるヤミ金融(上) , 韓国の庶民を苦しめるヤミ金融(下)

噂に尾ひれが付き止まる所を知らない悪質な書き込みがネットイナゴとなって韓国全体に広まり、2008年10月2日にチェは自ら命を絶った。

チェの自殺は韓国社会に衝撃を与え、政府・与党は「チェ・ジンシル法」ことサイバー侮辱罪(遺族は“故人の冒涜であり残された子どものためにも”と法律にチェの名が冠される事には反対)の立法化を掲げ野党と激しい攻防を繰り返し、各メディアは一斉に多岐に渡る関連情報を報道した。また、警察は虚偽を書き込み逮捕された証券会社に勤める女性を逮捕したと発表したが、インターネットではその女性のあらゆる個人情報が流出し、それに関連してチェ・ジンシルの交友関係などを次々と報道、10月3日には故チェ・ジンシルと同様な方法で自殺が相次いでいるとも報道されたチェ・ジンシルさん後追い!? 自殺相次ぐ。インターネット上の人身攻撃は他の芸能人に及び、同じ境遇に立たされた芸能人の後追い自殺に繋がった。10月3日にトランスジェンダーチャン・チェウォンが自殺、10月6日にモデル出身の俳優キム・ジフが自殺しているが、それでもインターネット上の悪質なコメントはいまだになくなってはいない。

対象の模倣


これらの現象ではただ後追い自殺をするのではなく、自殺した人間と同じ手法で自殺しているという点が特徴的である。ウェルテルの時代はウェルテルと同じ格好(褐色の長靴と黄色のベスト、青色のジャケット)で同じ手段(ピストルによる)を用いて自殺をしている。岡田の時も、岡田本人と同様の手段である飛び降り自殺が増えたと言うべきであろう。hideの際にも前出の二例と同様の傾向が見られる。

脚注

関連項目


うえるてるこうか



出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


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